【連載】言の葉クローバー/たかはしほのか(リーガルリリー)『君と宇宙を歩くために』
心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は、結成10周年を迎えるリーガルリリーのたかはしほのか(ヴォーカル&ギター)が、今年のマンガ大賞1位に選ばれた作品を紹介。普通ができない主人公たちに共感しながらも、彼女の胸に刺さったセリフについて語ってもらいました。
----------------------------------- そしてそれを笑わずに教えてくれる友と出会えるのでしょうか 漫画『君と宇宙を歩くために』 -----------------------------------
笑われるのが怖いから学校で自分が聴いてる音楽の話はできなかった
最近は夜型の生活を送っていて、その中で読んだ一冊です。知り合いに教えてもらったんですけど、絵のタッチもキャラクターの雰囲気もすごく好きで、すぐにハマっちゃいました。 見た目がヤンキーの小林くんっていう子がいて、その子はアルバイトですぐミスしちゃって、全然続かないんです。だけど惨めな気持ちになるのが嫌だからカッコつけてメモしないで、またミスを繰り返してて。それがまさに私そっくりなんですよ(笑)。で、小林くんのクラスに宇野くんっていう転校生が来るんです。その子は記憶力はいいけど、同時にいろんなことができなかったり、周りの音が気になってパニックになっちゃうような子で。日常生活で焦ったり、困ったりしないように、自分がどう行動すればいいかメモしたノート=テザーをつねに持ち歩いてるんです。 正反対な2人だけど友達になって、一緒に天文部に入ることになるんです。今回選んだセリフは、その天文部の先生が部長と話してる中で出てくる言葉で。小林くんは宇野くんに宇宙のことを教えてもらって、空にある点がただの点じゃなくてデカい星だったんだ、って気づいてそれを先生の前でぼそっと話すんです。点だと思っていたものを点じゃないと気づけること、それを笑わずに教えてくれる友達の存在に、先生もジーンと来るっていうシーンで。 音楽をやってても同じことを感じるんですよ。私も楽器を始めたての頃は「何言ってんの?」とか「なんで曲作ってるの?」って聞かれるのが怖くて、曲を作っても誰にも聴かせられなかったし、お母さんにも気づかれないように声を殺して作曲していた。それに笑われるのが怖いから学校で自分が聴いてる音楽の話はできなくて。でもライヴハウスに行くようになって、自分の好きな音楽を笑わないでいてくれる人に出会って、バンドを組むようになった。 「この曲ヤバい!」「このギター最高だ!」とかって、音楽に興味ない人からしたら馬鹿にされるようなことかもしれないけど、それを笑わずに一緒に盛り上がってくれたり、聴いてくれたりする人がいるってすごくすてきだなと思って。私の人生を笑わないで聴いてくれる人は、バンドメンバーだし、私の音楽を聴いてくれる人たちなんです。そういう人がいるからバンドをやってるんだなって、あらためて気づいたセリフでもあります。 笑われることに怯えてる人もいるかもしれないけど、この漫画で救われる人がいるんじゃないかな。私も聴いてくれる人に「リーガルリリーの音楽カッコいいよね」って自信を持って言ってもらえるようなバンドになりたいです。 『君と宇宙を歩くために』 著者:泥ノ田犬彦 勉強もバイトも続かないヤンキーの小林大和と、変わり者の転校生・宇野啓介を描く友情物語。みんなが普通にできることができない自分への苛立ちを抱える小林と、みっしりと文字が書かれたノートをつねに持ち歩き、知らない人と話すのが苦手な宇野。普通ができない正反対の2人が壁にぶつかりながらも楽しく生きるために奮闘する。WEB漫画サイト「&Sofa」にて連載中。