取引先が破綻…回収不能になった「売掛金」「貸付金」を「節税」に活用できる「貸倒損失」とは【税理士が解説】
年末が近づいてきて、個人事業主や12月決算の中小企業の経営者の方は「決算対策」をどうしようかと考えていることと思います。真っ先に思いつくのが、「物品の大量購入」や「接待交際費の支出」等ですが、実は帳簿上の処理だけで済む方法もあります。その一つに「貸倒損失の計上」があります。回収できなくなった「不良債権」がある場合にとれる方法です。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。
「不良債権」で損失を計上できる「貸倒損失」
貸倒損失とは、債券が回収不能になって「不良債権」と化してしまった場合に、その額を「損失」として計上できるものです。債権は「プラスの資産」なので、それが回収不能になり、失われてしまった場合には、「損失」という評価がなされ「マイナス」になるということです。 税法上、貸倒損失の計上が認められているケースは以下の3つです。 1. 法律上の貸倒れ 2. 事実上の貸倒れ 3. 形式上の貸倒れ 以下、それぞれについて説明します。
「法律上の貸倒れ」とは
まず、「法律上の貸倒れ」は、債務者が破産したこと等によって、その債務者に対する債権の全部、または一部が切り捨てられてしまい、債権の全額または一部が回収不能になった状態をさします。 法律の規定や債務免除等、法的根拠に基づいて債権が切り捨てられると、回収は法的に不可能になります。そして、その切り捨てられた金額を「貸倒損失」として損金算入することができるのです。 (1)会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額 (2)(法令の規定による整理手続によらない)債権者集会の協議決定、行政機関・金融機関等のあっせんによる協議で、合理的な基準にしたがって切り捨てられた金額 (3)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額 なお、(3)の「債務免除」については、(1)(2)に準じるもの、すなわち、どうしても回収できない状態に陥り、その状態がある程度長く続いた結果、債務免除に踏み切らざるを得なくなったケースを想定しています。つまり、恣意的に債務免除をすることにより貸倒損失を計上して、税負担の軽減を図ることは認められないということです。