Z世代は「怒られない職場」に何を思っているのか 当事者不在が生み出すディスコミュニケーション
舟津:たしかに、若手を恐れること自体が、当事者不在な感じはしますよね。 そういう「丁寧な」扱いを求めている若い人たちもいるんですかね。みなさんの周りの人でもいいので、ものすごく丁寧に指導してくれて、気を遣ってくれることを、プラスに受け止めているのはあるんでしょうか。 原田:もちろんそういう側面あると思いますね。認識してないところでも、恩恵は受けているんだろうなと思います。 中村:恩恵は確実にありますね。僕は高校時代、しごかれるタイプの剣道部で、特によくいらっしゃるOBの方々は縛られるものが何もないので、ボコボコにしてくるんですよ。あれを会社でやられるってなったらかなりきついので、僕も会社を辞めちゃうと思いますし、それこそ「パワハラだ!」って訴えると思います。
おそらく、昭和の時代は多少なりともそうしたことがあったかもしれませんが、今ではほぼないんじゃないでしょうか。だとすると、やっぱりすごく恩恵を受けていると思いますね。ただ、僕たちにとってのマイナスが極限まで減ったせいで、マイナスなくては生まれないプラスまで減ってて、それはそれでよくないようにも思います。 ■上司にとっての合理的な振る舞い 舟津:今の話は大事なところですね。つまり、明らかにラインを超えていることに関しては、ちゃんと排除できるようになったと。ただ同時に、線引きって難しいから、どこまでがよくて、どこからがダメというラインが社会の中にない。だから新入社員も、そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫だとは思っているんだけど、上司側はラインがわからなくなっちゃっている。「もしかしたらこの人たちは、すぐハラスメントと言う人なんじゃないか」って不安になる。
それに対して、関わる中でラインを見極めていけばいい、っていう意見はあるかもしれないけど、コスト上できないということもありうる。部下が10人いるとしたら、10人全員にそういうことをやっている時間はないですよね。だから、個別化せずに全員に気を遣うっていうのは、上司にとっては1つの合理的な解になっているんだろうと思いますね。 では、次回は学生生活のリアルについて、伺っていけたらと思います。 (9月26日公開の第2回に続く)
舟津 昌平 :経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師