市販薬の過剰摂取「オーバードーズ」から若者救え 静岡県対策方針 大量購入防止、学校で危険周知へ
市販薬を過剰に摂取する「オーバードーズ」が若者を中心に広がっている問題を受け、静岡県は対策強化に乗り出す。薬局やドラッグストアに対して大量購入防止などの指導を強化し、学校現場で使う薬学講座のテキストに危険性を伝える内容を新たに盛り込む。背景には社会的な孤立や生きづらさがあるとされ、相談窓口の周知にも力を入れる。 このほど開いた県薬物乱用対策推進本部の会合で方針を決めた。 風邪薬やせき止めなどの市販薬は依存性がある成分が含まれているものがあり、大量に摂取すると意識障害や呼吸不全を引き起こす危険がある。大量購入や盗難を防ぐため、県は販売業者に対して購入者の手の届かない場所に置いたり、商品棚に空き箱を並べたりといった対応を徹底するよう指導する。 薬物乱用防止教育にも力を入れる。県内の小中学校や高校で実施している薬学講座のテキストに、オーバードーズに関する項目を追加。小学生向けは「一度にたくさん飲むのはたいへん危険で命に関わることもある」、中学生向けは「強い効果が欲しいために薬を過量摂取(オーバードーズ)することは、健康被害を引き起こし、命にも関わる」などと呼びかける。小中学校の保健主事を対象にした研修も実施する。 市販薬の乱用は若者の間で社会問題化している。国立精神・神経医療研究センター(東京)の調査によると、薬物依存症の治療を受けた10代の患者のうち2014年は市販薬を使うケースはなかったが、22年には65%を占めた。 オーバードーズや薬物依存に悩む人たちが相談しやすい環境をつくるため、県は県内の学生の協力を得て、相談窓口を周知するリーフレットなども作製する。 ■大麻摘発者数29歳以下 7割占める 静岡県薬物乱用対策推進本部の会合では、若年の間で大麻がまん延している実態についても報告があった。2023年の県内の摘発者数は前年より39人多い197人と過去最多を更新。このうち29歳以下の青少年が141人と7割を占めた。 SNSの普及で大麻を入手しやすい環境にあることに加え、「健康に害がない」などの誤った情報がインターネット上に氾濫していることが要因とされる。本部長を務める森貴志副知事は「『大麻乱用期』とも言える非常に憂慮すべき状況だ」と危機感を示した。 覚醒剤や大麻と似た作用を持つ化学物質を含んだ危険ドラッグの再流行にも懸念が広がる。危険ドラッグが原因とみられる救急搬送者は17年以降ゼロが続いていたが、23年は3人と7年ぶりに確認された。県薬事課は「県警とも協力し、『合法大麻店』を標ぼうする店舗への監視と徹底した取り締まりを行う」としている。
静岡新聞社