阪神はラッキーゾーンを復活するべきなのか 佐藤輝が球団へ「真面目に」要望 「バッターからしたら大きな違いなんで」
現状維持の年俸1億5000万円で更改した阪神・佐藤輝明内野手が23日、球団にラッキーゾーンの復活を要望した。「毎年だけどラッキーゾーンをつけてくれと。恒例ですけど。もちろん真面目に」と過去にも要望していたことを明かしたが、阪神はラッキーゾーンを復活させるべきなのだろうか。(金額は推定) 【写真】佐藤輝が要望する甲子園にあったラッキーゾーン 打者にとってあるのとないのじゃ大違い 阪神甲子園球場では、本塁打率アップを目的として1947年5月にラッキーゾーンが設置され、1967年から21年連続でチーム本塁打数は3桁を超えた。バース、掛布、岡田、真弓らの長距離砲を擁し、リーグ優勝&日本一に輝いた1985年には、球団史上最多となる219本塁打を放った。 だが、撤去後の1992年から5年連続でチーム本塁打数は2桁に落ち、撤去後33年間でチーム本塁打数が3桁を数えたのは13度で、言い換えれば33年のうち20年は3桁に届いていない。直近3年間も2桁にとどまっており、今季の67本塁打は、撤去後では2012年の58本塁打に次ぐワースト2位となった。 甲子園球場でのチーム本塁打数を見てみても、撤去前の1985年には過去最高の109本を記録したが、撤去後は2010年の63本塁打が最高で、50本塁打を超えたのも33年間でわずか6度と、『飛ばないボール』と呼ばれた時代があったにせよ、ラッキーゾーン撤去の影響は如実に数字となって表れている。 佐藤輝はラッキーゾーンの設置を要望した契約更改交渉について「(球団は)笑ってましたけど。でも、言わないと始まんないんでね」とし、続けて「付けさせてもらえるなら」と、自費を投入してでも復活させたいという強い思いを口にした。 左打者ではNPB史上初となる新人から3年連続20本塁打を記録したが、今季は16本塁打。不振もあったが、ラッキーゾーンがあれば、という打球があったことも確かで、佐藤輝は「(ラッキーゾーンがあれば本塁打数は)もっと増えるでしょ。減ることはない。バッターからしたら大きな違いなんで、それは」と断言した。 ラッキーゾーン時代を経験した阪神OBの中田良弘氏は「投手目線からしたらラッキーゾーン復活は反対。俺はあった時代に入ってるから、なくなった時は『あっ、やられた』という打球が外野フライになったりしてね、それまでより大胆に攻められるようになった。これは投手心理としてとても大きなウエートを占めるよ」と指摘する。 ただ、打者目線、ファン目線に立つと「最近は点が取れない試合が続いてるからね。たまに1対0、2対1という試合なら我慢できるけど、今はそういう試合が多い。勝てばいいけど、負けた時に投手戦というような試合が多いとファンが可哀想だし、捉えた打球がアウトになってしまうバッターの立場になると、もう一回設置してくれよという声が出るのも理解できる。(みずほ)ペイペイドームもホームランテラスができてホームランが増えたし、一発逆転が期待できる試合が増えることもファンを喜ばせたり、盛り上げる一因になると思う」と解説した。 高校野球の金属バット導入による本塁打増が、ラッキーゾーン撤去の理由のひとつにもなっていた。だが、その高校野球では今春センバツから低反発バットが導入され、同大会では31試合で柵越え本塁打は2本にとどまった。夏の甲子園大会でも、金属バットが導入された1974年以降、最少となる7本塁打。打球速度の軽減により、主に投手の負傷事故を減らすといった目的が果たされつつあるのであれば、ラッキーゾーンが復活してもいい環境は整いつつあるように思う。 ただ、阪神の嶌村球団本部長は「やっぱり甲子園球場のあるべき姿が今の球場であるので、選手の意見としてはお聞きはしますけれども、今のままでいかせて頂きます」と回答した。 最近は投手力で勝利を収めることが多い阪神。ソフト面、ハード面も含めて勝つためのチーム作りはもちろん必要で、最も優先されるべき事項だと思う。ただ、佐藤輝が意を決して口にした覚悟、ラッキーゾーン復活を望むファンの思いを完全に無視しているとは思わないが、頭の片隅に置いてもらえたらと思う。(デイリースポーツ・鈴木健一)