フィリップ・スタルクが着る、語る。ストーンアイランドの《GHOST》コレクション。
革新的な生地開発とプロダクトデザインに特化したブランド〈ストーンアイランド〉のイメージモデルとなった世界的デザイナー、フィリップ・スタルク。実際に纏った《GHOST》コレクションの印象と自身のデザイン哲学との共通点を聞いた。 【フォトギャラリーを見る】 〈ストーンアイランド〉がカプセルコレクションとして展開する、ミリタリーにおける“カモフラージュ”をコンセプトとした《GHOST》。初めて見たときに、自身が2002年にデザインしたカルテルの透明な椅子《ルイ・ゴーストチェア》が心のなかで重なったと語るフィリップ・スタルク。 「どちらも『消える』というコンセプトに基づいている点でよく似ています。すべてがモノクロームで統一された《GHOST》は目立つことも、背景に溶け込んで視界から見えなくなることもできる。僕自身は纏った瞬間に、自分がGHOSTになるような感じがしました」
トレンドや表層的な美しさは短命でうつろいやすいもの。環境や状況と調和し、揺るぎのない一貫性をデザインで追い求めるスタルクにとって、GHOSTは単なる〈ストーンアイランド〉の新作コレクションではなく、デザインと素材の知性を極限まで引き出し、品格と機能性を高めた結晶だと評する。 「僕は都会よりも、誰もいない山のてっぺんや砂丘の上、大海原を好む現代の原始人。だからこそ、どんな環境にも適応する機能的で耐久性の高いウエアが必要なんです。樹脂コーティングで防風性を高めた《GHOST》のダウンパーカは、厳しい自然と直面するときには理想的なアイテムだと思います」
研究と革新を繰り返しながら限界に挑戦してきたストーンアイランドのビジョンに強く共感すると言葉を続けるフィリップ・スタルク。 「〈ストーンアイランド〉を一言で表現するなら『FUTURE(未来)』でしょうか。自身の価値観を信じ、信念をもって突き進む様子は僕のデザイン哲学にも通じるものだと思います」 形式的で見掛け倒しのものとは距離を置き、デザインはエコロジー、社会、政治などより本質で大きな課題に挑戦すべきだと主張するフィリップ・スタルク。知性の宿るクリエーション、適切なものづくりこそが時を超えて世に受け入れられ、日常を向上させ、持続可能な社会を作り出していく。そのためにはデザイナーもメーカーも、時間と努力を惜しむことなく、挑戦を重ねていかなければならないと話す。
text_Satoshi Ikai