『今日好き。九龍編』5話ーー「友達止まりは嫌……」 毅然とした態度の女子は報われるか?
11月20日よりABEMAにて放送中の恋愛番組『今日、好きになりました。九龍編』(以下:今日好き)。現役高校生たちが2泊3日の修学旅行に飛び出し、運命の恋を見つける同番組には、時に甘酸っぱく、思わず胸がキュンとするような青春と恋模様が溢れんばかりに詰まっている。 【写真】「ゆっくりでいいから」たかとを見送りひとり涙を流すひいろ 以下より、12月18日公開の5話からから見どころを紐解いていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。 ・るい、そらを振り向かせる朝デートで“ピアノの連弾”に挑戦 るい(村澤瑠依)は本当に優しい。筆者がもし彼と同じ立場だったら、意中の相手に「お前が始めた物語だろ」とでも言ってしまいたくなるはず。初日のランチで、そら(中川そら)と2ショットに誘われたところをピークに、第一印象で気になった女子には目もくれず、彼女にだけ意識を向けてきながらも、その恋物語は右肩下がりな展開を継続中。もちろん、そらが初日から最終日まで、るいとともに過ごす義務も、ほかの男子を意識してはならない制約も存在しないが、るいにとっては、日増しに落ち着かない感情が膨らむばかりだ。 そんな状況下で、3日目の朝デートに。そらを女子部屋から誘い出すと、るいは以前の約束通り、ピアノの腕前を披露する。『今日好き』に登場する楽器といえば、アコースティックギターが定番なだけに、ピアノが映るのはなかなか新鮮。るいの好青年ぶりをますます輝かせるかのようだ。 まずは「Summer」から「人生のメリーゴーランド」と、久石譲メドレーを届けると「弾く? 一緒に」とお誘いを。用意してきたのは「猫踏んじゃった」。そらには、自身と呼吸を合わせながら、黒鍵ひとつだけをタイミングよく鳴らす役割をお願いした。きっと、自身の演奏から連弾に繋げたり、そらでも簡単に弾ける楽曲をセレクトしたりと、昨晩のうちに色々と考えを巡らせてきたのだろう。 勝手ながら、ここで思い出されたのが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』にて、主人公の碇シンジが、謎の青年・渚カヲルとの連弾を通して、徐々に心を開いていったシーン。劇中では「上手く弾く必要はないよ。ただ、気持ちのいい音を出せばいい」「ピアノの連弾も音階の会話さ」なんてセリフもあったわけだが、るい×そらの様子を遠目に見ていると、本当にその言葉通りだと思わされる。 しかも、彼らはもしかすると、恋人になるかもしれない間柄。ひとつの椅子を分け合う距離感や、微かに指が触れ合うあたり、これまでにはなかった新しい感情が芽生えていっているはず。彼らを見守る我々視聴者ですら、甘酸っぱい想いを勝手に共有しているのはどうしてなのだろう。 もう少しだけ深く考えると、るいは2日目までアピールを続けてはいたが、それは裏返せば、恋愛的な主導権を握っていたのがそらの方だったといえる。だが、連弾を通して彼女をリードすることで、自身の方に主導権を引き戻す……。そんな意味合いもあったのかもしれない。るい自身は、昨晩までの“しんみりムード”を、なんとか明るい雰囲気に変えたかったとのことだったため、これはさすがに深読みしすぎだろうか。そして、そらの想いは揺れ動いたのか……。 ・のりか、逆襲のとき「私は友だち止まりは嫌です」 この朝デートは、ただでは終わらない。“お取り込み中”のところに、飛び込んできた女子メンバーが。るいを追う、のりか(千葉紀佳)である。この日のグループ行動前に自身の存在をアピールし、「見ててほしいなって思ってます」と、声をきゃるんとさせる。今日も変わらぬかわいさだ。そこから、ピアノの“アンコール”をおねだり。彼がそこまで上手く弾けないと謙遜すると「とか言って、ホントはできちゃうんじゃないですか~?」と、自身の肘で彼の二の腕をつつくなど、ちょっとだけ昭和バイブスな女子高生の反応を見せたり、渾身の演奏に大喜びをしたり……。 最後には、昨日に密かに購入していた、色違いの“招き猫”のキーホルダーをプレゼントして、まるでのりか自身が「猫踏んじゃった」に引き寄せられたネコかのような展開が続いた朝デート。同じ旅の女子メンバー同士を比べるのも忍びないが、想いの丈を込めた演奏をいちいち喜んでくれるなど、るいの行動ひとつひとつに好反応を示してくれていたのは、間違いなくのりかの方だった。 ここから少し先の展開を明かすと、この日のグループ行動にて、のりかは彼に二度目の“フラれ宣告”をされるのだが、それに対して「私は友だち止まりは嫌です」と、毅然とした態度で立ち向かう。こうした時代に、意中の相手に流されず、イエスマンにはならない強い女子。彼女の姿には誰もが見習うところがあるし、るいは本当の本当に、のりかを選ばなくて後悔しないだろうか? ・たかと、ひいろ&はるとの“ダブルデート”の行方は? ひいろの涙に込められた意味 前述の通り、3日目午後も私服に着替えて、2組に分かれてのグループ行動に。グループ分けの方法は、女子メンバーのみが挑戦する“花くじ”。用意された5本のうち、2本の赤い花を引き当てたメンバーは、気になる男子を指名して、香港最大級のテーマパークでダブルデートを楽しめるほか、男子の指名は重なってもよいという。 すると、赤い花を引き当てたのはなんと、ひいろ(鈴木日彩)&はる(矢口桜咲)のライバル同士。指名するのはどちらも、たかと(矢口昂歩)に決まっている。複雑な三角関係が、いよいよ直接対決……なんて、思わず流れで書いてしまいそうだが、実際のところはとてつもなくピースな空気感が漂う時間となった。 昨日の半日デートに続き、気を張って涙を堪えながら強気で臨む、はる。対して、初日こそ大きな印象を残しながらも、あまり一緒の時間を過ごせてこなかった、ひいろ。両者のスタンスこそ違えど、お互いに抜け駆けするでもなく、お互いに正々堂々と向き合う姿は見ていてとても清々しい。特に、ペンギンの餌やりをピュアに楽しみまくるはるとに目線をやり、動画を回しながらも、「ひいろも話したいけどあんた(はる)も話したいやろ」「気遣わずにツーショとか誘っちゃってもいいよな」と、女子同士の秘密の作戦会議で、目の前の光景とはまったく別の会話をするあたり、まるでドラマのワンシーンかのようだった。 ただこの後、ひいろはたかととの念願の2ショットで、序盤から“なにか”を察する。彼が慎重に言葉を選ぼうとする姿に「ゆっくりでいいから」と促すひいろ。この場面の最後、「ひいろがたかとくんのこと、好きやったっていうのは知っててほしいし……好きでした」と語ったのが、すべての答えだ。 最終日が迫るなか、はるに対する想いが徐々に募った結果。当初の約束通り、たかとは3日目のうちに結論を出した。そして、たかとを見送ってから、ひいろは一人で静かに悲しい想いを解き放ち、ため息をこぼす。その表情が初日よりも大人びていたことに、彼女の成長が描かれていたのは、言うまでもない。
一条皓太