選手、監督、研究者…“3足のわらじ”は「忙しくて大変」 35歳・高谷惣亮がロス五輪を狙うワケ
レスリング全日本選手権
レスリング界の「鉄人」高谷惣亮(35=拓大職)が21日、16年連続17回目の全日本選手権出場を果たした。昨年の同大会決勝で敗れてパリ五輪出場は逃したが、東京・代々木第二体育館で行われた同大会男子フリースタイル86キロ級に登場。目標とする26年アジア大会に向けて再スタートを切った。 【動画】「素晴らしかった」と海外称賛 レスリングの日本選手が深々とお辞儀した実際の映像 パリ五輪銀メダリストの弟大地(30=自衛隊)をセコンドに従え、高谷が元気な姿を見せた。準決勝では白井達也に1-2で惜敗したものの、3位決定戦では吉田真聖を圧倒して1分あまりで11-0のテクニカルスペリオリティー勝ち。吉田沙保里、伊調馨と並ぶ13回目の優勝こそ逃したが、2010年以来の全日本選手権銅メダルを手に「昔はけっこう銅メダルもありましたから」と笑った。 実は11月、乗車していたバイクがマンホールの上でスリップして転倒。左膝を負傷していた。「痛くて膝がつけない」状態で「タックル王子」の異名をとった得意の高速タックルのキレも悪かった。試合中には何度も膝に手をやる場面もあった。 「無理して出なくても」という考えもよぎったが、出場に踏み切ったのは09年から続く連続出場を途切らせないため。17回という出場回数は歴代4位タイ。18回の吉田沙保里、19回の浜口京子、最多22回の柴田寛の記録も視野に「最多記録まで、出続けたい」と言った。 もう1つ、目標として明かしたのはアジア大会出場。これまでは権利があっても世界選手権出場のために辞退してきた。「アジアのオリンピックだし、出てみたいし、アジアのメダルもとりたい」。代表選考会となる来年の全日本選手権のために「今年は試運転をしておきたかった」と口にした。 世界選手権準優勝の実績を持ち、3度出場した五輪もメダル候補だった。それでもアジア大会にこだわるのは、26年大会の開催地が名古屋だから。五輪3大会目の21年東京大会は無観客だった。「それは大きいですね。名古屋で日本のファンの前で戦いたい」。声援が力になるタイプだけに、地元開催の大会への思いは強い。 決して簡単な挑戦ではない。「ALSOK」の社員として競技に専念していた時とは違う。昨年4月に退社して拓大監督に就任。「今は指導が7で自分の練習は3くらい。選手に専念する環境はとっくに超えているけれど、その中でしっかり戦いたい」と話した。 さらに、筑波大大学院生として映像分析などレスリング指導につながる研究も忙しい。昨年12月の全日本で男子初の4大会連続五輪出場の夢がついえた時に「引退はしないけれど、違う形でレスリングを続けたい」と話していた通り、今は選手、監督、研究者と「わらじ」は3足。「しっかり履き潰してやっていきたい」と言って笑った。