BMWが時代遅れとも思える直6エンジンに固執するにはワケがある! 世界中のマニアがベタ惚れする「シルキーシックス」とは
BMWといえばやっぱり直6エンジン
航空機エンジンメーカーをルーツとするBMWは、その社名もずばりBayerische Motoren Werke(バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ=バイエルン・エンジン工場)の頭文字からとったものである。創業は第1次大戦中の1916年。戦闘機フォッカーD Ⅶに積まれた直列6気筒19リッターのタイプIII a型が、その記念すべき第1号だった。 【画像】「直6」エンジンを搭載した世界の名車の画像を見る 最初のエンジンが直列6気筒だったというのは、今にして振り返れば、なんともBMWらしいシリンダー形式だったといえそうだが、同社初の4輪生産車となった1933年の303も、1173ccのM78型直列6気筒エンジンを積むモデルだった。 その後BMWの4輪生産車は、直列4気筒からV型12気筒まで多彩なエンジンを開発、搭載する歴史を歩んできたが、6気筒エンジンに関しては頑なまでに直列6気筒にこだわり続けている。何か理由があるのだろうか? 108年におよぶBMWの歴史のなかで、同社がひと際直列6気筒に対して強い主張を示したエンジンが、2004年に登場させたN52型(2497cc/2996cc)だった。当時、6気筒エンジンは2000~3500ccクラスの排気量をカバーするシリンダー数と見なされ、全長が短いV型6気筒はFF車両にも搭載可能であることから、もはや全長の長い直列6気筒は不要、という考え方が一般的となっていた時期である。 こうした時流にあって、BMWは質の高いミディアムサルーンを構成する要素として直列6気筒は必要不可欠と姿勢を打ち出した。新たな直列6気筒を作り上げたが、その内容がすさまじかった。量産車のエンジンでここまでやるか、という贅の尽くし方だった。 直列6気筒は、エンジン全長が長くなるため、エンジン重量が重くなりがちである。まず、この点に対応(というより払拭)するため、使用する材質を徹底的に検討した。クランクケースにアルミニウムとマグネシウムによる複合素材を採用。よく知られるように、軽量だが腐食や温度補償の問題がつきまとうマグネシウムに対し、BMW設計陣はその弱点を補う目的でアルミニウム素材を併用。 ほかにも軽量マニホールド、軽量中空カムシャフト、マグネシウム合金製ヘッドカバー、アルミニウム合金製シリンダーヘッド、アルミニウム合金製オイルパンなどの採用により、それまでBMWの中軸を担ってきたM54型直列6気筒と較べ、約10kgほど軽い161kgのN52型を作り上げることに成功。このN52型は、量産車用直列6気筒として最軽量となるエンジンに仕上がっていた。