インドネシア新大統領にプラボウォ氏就任-軍追われた過去を克服
(ブルームバーグ): インドネシアのプラボウォ前国防相が20日、第8代大統領に就任した。スハルト元大統領の失脚につながった抗議活動を巡り人権侵害容疑で軍を追われてからの26年間に、大統領まで上りつめた。独裁者だった故スハルト氏はプラボウォ氏の元義父に当たる。
プラボウォ氏(73)は、ジョコ前大統領の息子であるギブラン副大統領と共に就任の宣誓に臨んだ。かつて西側諸国による制裁を受け、過去2回の大統領選でジョコ氏に敗北を喫したプラボウォ氏が、目覚ましい復活を遂げたことを就任式は示している。
新大統領は国会で1時間にわたって演説し、「われわれは試練や障害、脅威を恐れない勇敢な国にならなければならない」と表明。「わが国の歴史は英雄的行為、犠牲、勇気に満ちあふれている。勇敢な国とは、不可能を可能にする国家だ」と論じた。
プラボウォ氏は同日に内閣の陣容を発表。予想されていた通り、ムルヤニ財務相が続投となり、政策の継続性が示唆された。新大統領は経済成長率を年8%に押し上げるとともに、さらに多くの投資を呼び込む考えだ。
ジャカルタの国会で行われた就任式には、ブルネイのボルキア国王やシンガポールのローレンス・ウォン首相ら外国の要人が出席。主要貿易相手国である米国と中国も代表を派遣した。
2月の大統領選前にソーシャルメディアで印象を作り替えたこともあり、プラボウォ氏は、無料で学校給食を提供すると公約している孫思いの祖父というイメージチェンジに成功した。また、前大統領が手掛けた企業に優しい政策の継続も表明した。
だが新大統領の最も野心的な目標は、インドネシアを世界で最も高成長を遂げる国に変えることだ。一方、ジョコ前大統領が長年にわたって政界のエリート層を強固にしてきたことから、国内の民主主義が後退するかどうかも注目される。
助言企業グローバル・カウンセルのアソシエート、デディ・ディナルト氏は「プラボウォ政権は、愛国心と実利的な統治が混じり合うものになる」とし、「統治スタイルはジョコ氏より権威主義的になることが予想され、政治の安定性は高まるかもしれない」と語った。