【悼む】「うふふふ。どうもすみません」同じニックネームに無邪気に笑った中山美穂さん、最終章の続きをもっと感じてみたかった
女優で歌手の中山美穂さんが6日、都内の自宅で死去した。54歳だった。中山さんはこの日夜、大阪市内でコンサートを行う予定で、警視庁渋谷署によると、朝に都内の待ち合わせ場所に来なかったため、事務所関係者が知人と自宅を訪問。浴室で倒れているところを発見された。所属事務所は「死因などの詳細は現在確認中です」とコメント。アイドル、女優としてトップを走り続けた中山さんの死に、日本中に衝撃が走った。 【写真】12月5日に最後のインスタ投稿「心がえぐられて」 * * * * * 【悼む】 2018年、主演映画「蝶の眠り」の公開前にインタビューした。記者の名前が同じ「美穂」であること、ゆえに「ミポリン」というニックネームで呼ばれてきたことを告げると「うふふふ。どうもすみません」と無邪気に笑った。 ゆったりとした口調、吸い込まれるような声質。真剣に人生論を語っている最中、取材スペースに置いてあったイタチの剥製(はくせい)に気づくと「キャッ!」と少女のような悲鳴をあげた。言葉では説明できないような引力を持つ人だった。 中山さんが演じた役は、遺伝性アルツハイマーを患い、記憶が薄れゆく中で自分の人生の幕引きを考える女性。作品にちなみ「自分の現在地ってどんなふうに捉えていますか?」の問いかけに「こんなこと言うと、怒られるかもしれないですけど、最終章かなと思ってます」と淡々と答えた。「最終章…。最終章ですか!?」と驚きのあまり聞き返してしまった。 「いつもそういう気持ちでいたいなと思う。どこまでやれるか分からないですけど…。いま1ページ目を書き始めたところですかね。エンディングは予想できていませんが、でもいつ何があるか分からないでしょう? だからこそ、もう何でもやってみたいって思うのかもしれないです」 トップアイドル、トップ女優として30年以上もの間、仕事のみならず私生活まで良くも悪くも注目の的であり続けた。「中山美穂という名前は重くなかったですか? この名前と一緒に背負ってきたものを今は愛せますか?」と聞きながら無性に感情移入してしまい、なぜだか泣きそうになった。中山さんは「あ、ウルウルしてる。私も泣いちゃう…」と瞳をうるませつつ「愛せます。すべて受け入れています」と言い切った。腹をくくった人の言葉だった。 インタビューを終え、帰りがけに「最終章、終わらないでほしいです」と伝えると、中山さんは「大丈夫。『そんな簡単に死なない』とみんなに言われます」と笑い飛ばした。突然すぎるお別れで、“未完”となってしまった中山さんの最終章の続きを、もっと感じてみたかった。(宮路 美穂)
報知新聞社