【MC20がベース】 今季そのまま参戦のコンペティションモデル マセラティGT2にモデナで試乗
ジェントルマン用のドライバーズエイド
その走りは一言で言うと、“ピュア”。 スーパースポーツとしては小排気量な3Lツインターボ。そのタービンをさらに大型化したエンジンに、トルク不足やピーキーさはまったく感じられなかった。 正確に言えば走り出した当初は過給圧の遅れを感じたが、メカニックの指示でトラクションコントロールのダイヤルを緩めて行くとそのレスポンスが復活した。 そう、ABSやエンジンマッピング(これは最大だった)も含め、MC20にはジェントルマン用のドライバーズエイドも備わっているのだ。 このアウトプットに対して足周りは気持ちよく追従し、ミッドシップならではのトラクションでタイヤを抑え付けてくれるから、安心してアクセルを踏んで行ける。 気をつけるべきはターンインの鋭さで、ブレーキを残し過ぎればオーバーステアに転じる。もっともレーシングカーはこのヨーモーメントを利用して向きを変えて行くわけだから、その動きは理にかなっている。オーナーは車高やジオメトリで好みのセットを作り出せばよいだけなのだが、現状だとジェントルマンドライバーには、少し挙動がシャープかもしれない。 そしてこれを開発したドライバーであるアンドレア・ヴェルトリーニさんに伝えると、「ニュータイヤを履けば、すごく扱いやすくなるよ」と笑顔で答えが返ってきた。どうやら今回の試乗会で、タイヤを使い切ってしまったようなのだ。 これには筆者も、思わず笑ってしまった。なにせ相手は44万ユーロもする車両であり、今季はそのままレースに参戦するマシンなのだ。 ジャーナリストの試乗だからこそ安全を期してニュータイヤを用意しておくべきじゃないのかしらん? とも思ったが、そのおおらかさがなんともイタリアらしい。 その一方で、確かにライフ末期のスリックタイヤを履いたと考えれば、マセラティGT2は確かに扱いやすいマシンだとも納得した。 総じてマセラティGT2は、とびきりピュアなGT2マシンだ。まさにMC20譲りの快適で刺激的な走りを、レーシングレベルでもそのまま受け継ぐ素晴らしいレーシングカーだ。そしてこれを作り出した開発陣たちやメカニックたちも、とびきりピュアなイタリアンブラッドたちだった。
山田弘樹(執筆) AUTOCAR JAPAN(編集)