タザキの投資本案内「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」/優良企業の8つの条件とは?
こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。 【図解】高いROEが重要な理由 これまでに投資・マネー系の本を300冊以上読破した経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介。24年2月には、著書「しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた」を刊行予定です。 今回は、「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」(著:メアリー・バフェット、デビッド・クラーク/日本経済新聞出版)という本をご紹介していきたいと思います。 この本は優良企業の見極め方や、投資収益率を高める方法など、個別株に長期投資を行う際の具体的な戦術を学びたいという人にぴったりの1冊です。 著者はバフェットの息子の元嫁であるメアリー・バフェットと、バフェット一家の親しい友人であるデビッド・クラーク。長年バフェットと生活を共にした2人です。 内容は基礎編と応用編に分かれていますが、まずは基礎編から確認し、応用編も一部ご紹介します。 ■優良企業とは 買うべき優良企業は、「消費者独占企業」と言われます。それと対比されているのが買ってはいけない「コモディティ型企業」です。 消費者独占企業は、ブランド価値があり、市場支配力を持っている企業です。本書の有料ブリッジ(この橋を渡るためには通行料を払わなければいけない)というのはおもしろい表現です。今で言えばAppleやGoogleのようなプラットフォーマーでしょうか。 一方、コモディティ型企業は、他社と差別化ができず、付加価値の低い事業を行っている企業です。結果として低い売上高、低い利益率、利益が不安定などの場合があります。 買うべき優良企業はもちろん、「消費者独占企業」であると言われています。 ■消費者独占企業を見極める8つのポイント 消費者独占企業の8つの基準は以下の通りだそうです。 1. 消費者独占力のある商品やサービスを持っている バフェットが大好きな「コカ・コーラ」は、コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、バーなど、どのお店でも絶対に取り扱わなければならないブランド商品です。 確かに、ソフトドリンクメニューの中に、コカ・コーラの文字がなければ、その店の商品ラインナップから何か大事な一部が欠けているような感じがしますよね。 2. 一株当たりの利益(EPS)が力強い増加基調にあるか 大事なのは、長期的にEPSが力強く増加しているかどうかです。一時的なマイナスが出ても、それが一過性であれば問題ありません。 3. 多額の負債を抱えていないか 金があってもそれが事業の利益を上げやすくするためのレバレッジとして機能する場合はいいのですが、その一方でリスクも高まるので、基本的にはあまり借金がないほうがいいです。 同書執筆当時のコカ・コーラは、長期負債の残高は1年間の利益よりも少ないので、1年分の利益を使えばすぐに借金を返済できました。長期負債の残高が3年分の利益以下である企業が推奨されています。 4. 株主資本利益率(ROE)が十分高いか 15%が一つの基準として挙げられていますが、日本株の平均的なROEはアメリカ株に比べて低いため、15%というのは高いハードルかもしれません。 5. 現状を維持するために内部留保利益の大きな割合を再投資する必要があるか 利益を、固定資産のメンテナンスや新規開発に、大量に投じる必要がある場合は、その企業はあまり好ましくないかもしれません。現状維持の負担が小さければ、株主への配当や高収益事業の拡大に使われる可能性があります。 6. 内部留保利益を新規事業や自社株買い戻しに自由に使えるか ポイントは「配当に回すよりも、高収益の事業に再投資してほしい」ということです。 7. インフレを価格に転嫁できるか インフレは日本でも本格化し始めていますが、株式投資の観点では、「値上げしても、買ってもらえる」商品であることが重要です。 8. 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇につながっているか 業績が上昇した分が、長期的な株価上昇につながっているかを確認します。 以上、8つの特徴が買うべき消費者独占企業の特徴でした。気になっている銘柄をぜひこの8つの特徴に当てはまるかどうかチェックしてみてはいかがでしょうか。 ■優良企業の4つのタイプ 続きまして、優良企業の4つのタイプをご紹介していきます。 1. 長期利用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業 コカ・コーラにはまさしくブランド価値があり、一度飲んでしまったら終わりなので、長期利用はできない商品です。ブランド価値を持つ企業は強い価格交渉力を持っています。 2. 他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連事業 今で言えばAppleやSNS関連のメタなどが挙げられるのではないでしょうか。 3. 企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業 警備保障事業、確定申告代行サービス、クレジットカードなどがこのカテゴリーに属します。 4. 宝石、装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業 店舗や土地を自社で保有し、低コストで持てていることが条件となります。このような企業は、地域で独占することができれば規模の経済も働くので、消費者独占企業と言えるでしょう。 以上、4つのタイプが消費者独占企業としての典型的な特徴です。この4タイプのいずれかに属する銘柄を見つけたときは、ぜひ投資を検討してみたいところです。 ■絶好の買い場4選 最後は絶好の買い場4選です。 ケース1 相場全体の調整や暴落 これが最もわかりやすいタイミングです。業績とは関係なく下がるので、その銘柄に悪い材料があるとは限りません。安く買うチャンスであるため、安心して投資できます。 例えばウォーレン・バフェットは1987年のブラックマンデーという相場全体の暴落のときに大きく買っています。 ケース2 全般的な景気後退 不況はだいたい1年から4年ほど継続するのですが、絶好の投資機会でもあると書かれています。ただし、その際には不況前に業績のよかった銘柄を選ぶ必要があります。もともとそういった強さのある企業であれば、不況後に立ち直ることができます。弱い企業は淘汰されてしまうので、ここは本当に見極めが重要なタイミングになると思います。 ケース3 個別企業の特殊要因 解決可能な一時的問題や、事件や事故などで株価が下がったという一時的なタイミングが当てはまります。 過去にアメリカン・エキスプレスのサラダオイル事件という詐欺事件があり、バフェットはそのときにアメックスが市場で売られるなか、一時的な問題でしかないと判断し、市場と逆行して、大量に買ったのです。結果としてアメックスは復活し、バフェットは大儲けすることになりました。 ケース4 企業の構造変化 合併、リストラ、企業再編などが起きると、一時的な特別損失が計上されたり、一時的に赤字転落したりすることもありますが、そういった状況も買い時になる可能性があります。例として、コストコ(日本でも人気ですよね)にバフェットが投資したのは、合併やリストラによって一時的な赤字を出したタイミングでした。また、特定の事業部門がスピンオフしたときも企業の構造変化に当てはまります。 以上、4つが買い時のまとめになります。相場全体の調整や暴落、景気後退、個別企業の特殊な要因、企業の構造的な変化、この4つになりますね。 ■高いROEが重要な理由 続いて応用編です。なぜ高ROEが好まれるのかを、一戸建ての不動産投資に例えていたのはおもしろい例えでした。 賃貸用の一戸建てを銀行ローン1500万円、自己資金500万円で購入します。家賃から、ローンの利払い、税金などの諸費用を差し引いた残りが利益で50万円です。この場合のROEは10%となります。 これは、「疑似債券」のようなものです。ROEが高ければ、複利効果も高まり、多少割高なPERでも十分な収益率を実現できるため、投資対象となります。 ■将来株価と、期待収益率の予想 消費者独占企業の場合、過去のEPS成長率から、将来の株価を予想することが可能です。同書のキャピタル・シティーズ株の例を使います。1970年から1980年の10年間にEPSは0.08ドルから0.53ドルに成長しました。EPS成長率を求めるには、エクセルに「=(0.53/0.08)^(1/10)-1」を入力します。答えは約20%です。 次に、この成長率から、10年後のEPSを予想します。エクセルに「0.53*(1.0.2)^10」を入力します。すると、予想EPS3.28ドルという数字が出ます。 予想株価を出すには、過去のPERを参考にします。過去10年のPERは9倍から25倍の範囲で推移していました。その下限の9倍を用いて、予想EPSに掛けます。すると、予想株価は3.28×9で、29.52ドルになります。 同書では、単なる予想株価よりも期待収益率を重視するので、1990年の予想株価29.52ドルと1980年の株価5ドルをもとに、10年間の期待収益率を計算します。エクセルで「=(29.52/5)^(1/10)-1」を計算すると、年率19.4%という期待収益率が得られます。 期待収益率で、他社の銘柄と比較してどうか、インフレ率をどれほど上回るのかを考えるのが、バフェット流と言われます。 ■まとめ 基礎編から、応用編の一部までをまとめてご紹介しました。具体的な銘柄選択の助けになるような全23レッスンが載っているので、非常に参考になる1冊だと思います。投資力を身につけたい方や、個別銘柄の選び方を学べる入門書を探している方には、ぜひこの内容をチェックしてみてください。