これが戦争の実態! ロシアが「資源&食糧」で好景気を謳歌
「OPECプラス」による協調減産
もうひとつは、サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構(OPEC)への接近だった。ロシアは世界第三位の原油生産国として供給国連合に仲間入りし、同じく第二位のサウジアラビアとともに協調減産をおこなって、油価の高く維持することに成功している。 実はクリミア併合後、東部ウクライナで内戦が始まった2014年秋ごろから油価が暴落した。背景に米国発の「シェール革命」がもたらした効果と、中国が「新常態」に入ったことによる需要の落ち込みがあった。油価の急落を受けて15年と16年、ロシア経済は2年連続のマイナス成長に沈んだ。 「シェール革命」は、世界最大の原油輸入国だった米国を、世界最大の原油生産国にした。つまり、グローバルなエネルギーの需給構造を一変させた。私は、これによってロシアと中東産油国の利害が価格維持という点で一致し、「OPECプラス」の創設へ向かわせた、と見ている。 16年12月、サウジアラビアをはじめ中東産油国との協議を経て、ロシアなどを加えた「OPECプラス」が発足する。そして22年2月、ロシアは世界の主要国がアフターコロナへ向かい、将来的にエネルギー需給のひっ迫が見込まれる状況下、あたかも油価上昇の波に乗るようにウクライナへ侵攻した。 ウクライナ侵攻後、油価(ブレント原油)は1バレル120ドル超でピークを打って急落する。が、同じく70ドル台で下げ止まる。侵攻が始まった22年7月に「OPECプラス」が協調減産を開始したためだった。米国の増産要求にもかかわらず、それはいまも続いている。バイデン大統領自ら、サウジアラビアを訪問したことは、いまだ記憶に新しい 西側はロシアの石油収入を減らすため、ロシア産原油の国際取引に上限価格を設ける制裁を追加した。にもかかわらず、23年のロシアの石油収入はさほどには減っていないようだし、ロシア中銀によれば、経常収支も500億ドルの黒字である(残念ながら侵攻後、ロシア政府は貿易の内訳を公表していない)。 要するに、エネルギー資源大国にして食糧大国であること。かつ、この二つの強みあればこその規律ある財政運営。それが、ロシア経済の耐性の骨格を成しているのではないか。日本人には縁遠いことだが、ロシアはいま、その耐性をいかんなく発揮しているように思う。