医薬品の配送、ドローン実証へ 福島県、中山間地域で初
県などは人口減少によって薬剤師などの医療人材が不足する中山間地域に、自動飛行するドローンを使って医薬品を配送する初の実証事業に乗り出す。県内では医療人材不足などで医療体制が不十分な地域が増えつつあるため、県は実証を通じて配送の安全性などを確認し、将来的なサービス導入と医療体制の改善につなげたい考え。 県が9日に発表した。15日に薬局のない田村市都路町で行われる。県によると、都路町唯一の医療機関である田村市立都路診療所が約14キロ離れた市内の調剤薬局に電子処方箋を送信。薬局から薬を搭載したドローンを自動飛行させ、パラシュートを使って地上約10メートルから診療所の駐車場に薬を降下させる。薬局から診療所に向かう途中、機体の点検などのための着陸を含め、約45分で薬を届けることができる見込み。 県によると、都路診療所には薬剤師がおらず、医師が院内で調剤業務を担っている。そのため診療所に在庫がない薬を処方する場合は取り寄せになるため、患者に再来院を求めている。ドローンによる配送が実現すれば、医師が調剤する必要がなくなる上、患者の再来院を省くことも可能になるという。 ドローンによる配送サービスを巡っては、本県は長崎県とともに国家戦略特区に指定され、レベル4飛行と呼ばれる「有人地帯の目視外飛行」の安全確保に向けたルールの検討を進めている。今回の実証は無人地帯でドローンを自動飛行させるレベル3飛行で行われるが、将来的にレベル4飛行が認められれば、薬局から診療所間だけでなく、各家庭まで薬を届けることも可能になるという。ただ無人地帯でも自動飛行には許可が必要で、飛行の安全性の確保などが課題となる。 本県では人口減少や少子高齢化、医療人材不足などが重なり、都路町と同様に十分な医療提供体制を維持できない地域が増えつつある。県は今回の実証を医薬品配送のモデルとしたい考えで、「ドローンによる薬の配送を実現できれば医療機関、患者双方の負担を軽減できる。安全性などを確認した上で、将来の導入につなげていきたい」(次世代産業課)としている。
福島民友新聞