【二本松の菊人形】節目へ飛躍の構想を(10月30日)
国内最大規模の菊の祭典とされる「二本松の菊人形」は会期半ばを迎えて花が盛りとなり、一層多くの来場が期待される。再来年は70回の節目に当たる。昭和、平成、令和と受け継いできた「菊の聖地」がさらに発展するよう今から構想を練るべきだ。 今年の菊人形はNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公である紫式部を中心に、平安時代の貴族社会と源氏物語の世界を表す7場面、25体で構成されている。藤原道長の望月の歌や百人一首にある紫式部の歌、菊の節句なども紹介されており、当時の文化や文学にも親しめる。 1955(昭和30)年の第1回開催時に約7万人だった入場者数は年ごとに伸び、ピークの1995(平成7)年は約44万人を記録した。その後は観光動向の変化に伴い減少傾向が続き、規模も縮小した。コロナ禍での菊花展への変更を挟み、昨年の来場者は約4万5千人だったが、今年は5万人を目標にしている。 最盛期は全国の開催自治体による「菊人形サミット」を開き、交流や技術者養成へ意見交換した。現在、二本松の菊人形は全国でも貴重な存在だ。時代に合わせた楽しみ方を提案していきたい。
大輪の三本仕立てや「菊手水」が市内の店先に飾られている。見て楽しむだけでなく、菊を学べる場が欲しい。洋の東西を問わずに愛され、絵画などの主題にも取り上げられている。食用にもなる。 こうした菊の文化や歴史を知ることは、菊のまちへの愛着と誇りを高めてくれる。菊人形の菊着け教室や小中学校での菊栽培に加え、にほんまつ城報館や市民交流センターで企画展を開催したり、道の駅や店舗内にちょっとした菊の知識に触れる場所を設けたりするのもいい。 菊人形を主催する二本松菊栄会は今年、菊人形の魅力を伝える「菊むすめ」を募集しない代わりに、福島美少女図鑑の2人を「菊人形アンバサダー」に委嘱した。公募中止を惜しむ声もあるが、会場での撮影会には大勢の写真愛好者が訪れ、菊花に囲まれた笑顔を作品に収めていた。 菊人形と菊文化の歴史を継承するには、関係機関だけでなく、市民一人一人がアンバサダーのような気持ちで将来を考え、もり立てていく必要がある。(佐藤克也)