66歳の現役パンクロッカー、the原爆オナニーズ・TAYLOWが語る「肉体と精神の変化」。そしてバンドの終わり方
TAYLOWにとっての“あるべき姿のパンク”
――結成42年のthe原爆オナニーズに今さらながらあえて聞きますが、バンド全体として今はどんな目的、目標を持っていますか? 「より“さらけ出すこと”じゃないかな」 ――“さらけ出す”ですか。と言うと……? 「みんな昔と変わらんと言いながら、変わることもあるじゃない。横山(1981年結成のハードコアパンクバンド・G.I.S.M.のボーカル・横山SAKEVI。2023年8月逝去)も亡くなったし。横山とは、仲よかったよ。多分、最初の頃のハードコアをやってた人たちは、みんな仲がいい。それぞれの思いがあるから『仲いいよ』って言うと、全員『そんなことねえよ!』って言うだろうけど(笑)。 ゼロ(1989年結成のノイズロックバンド、コーパス・グラインダーズのボーカル/ギターZERO)は、モルグの頃から横山を知っているから、いつも『あいつはさ』って話してた。だけど、そのゼロも亡くなっちゃった(2022年4月逝去)。奇形児のヤス(1982年結成のパンクバンド奇形児のボーカルYASU。2021年12月逝去)も、ヒロシマ(G.I.S.M.の元ドラマー。2022年1月逝去)も。 そういうことを考えると、今から自分をどうやってさらけ出してライブやっていけるかっていうのが楽しみなわけ」 ――楽しみなんですね。 「だって、できなくなっちゃった人がいるわけじゃん。でも、俺まだできるじゃん。 チバ君(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、ROSSO、The Birthdayなどのボーカリスト、チバユウスケ。2023年11月逝去)にしても、絶対にやりたいことあったのにできなくなっちゃった。俺はまだできるじゃん。 今日のステージの上で突然、心臓止まっちゃったら終わりだけど。そうなる前に、多分みんなが助けてくれるだろうし。 the原爆オナニーズの終わりは、できなくなったとき。さらけ出しながらやれるところまで行く。シノブが言ってたとおり、“できる限りは続く”っていうのが一番正しい見方かな。できなくなるというのがどんな状態なのかは、それは分かんない。そのときにならないと」 ――そのモチベーションは、どこから来るんですか? 「自分が音を聞いて暴れたいからやってる。それだけだと思う。バンドのメンバーにも、“僕が暴れられる音を出してね”みたいな。 それは20代の頃からまったく変わらない。僕の考える“あるべき姿のパンク”に対して、みんな協力してくれってことは」 ――あるべき姿のパンクとは、どういうことなのでしょうか。 「パンクバンドが他の音楽バンドと違うところは、何かを伝えるために音楽そのものというより、さらけ出した自分で表現するっていうこと。 自分が楽しいと思ってステージの上で“さらけ出してる”のを見て、みんなが同じように楽しかったって思って帰ってもらえれば正解。『やったね』って思えるんです」 ――TAYLOWさんにとって、そんなふうにさらけ出すことができれば、ライブは100点なんですね。 「だけど僕は100点と思えたライブは、一回もないんです。90点は突破できるんです。でも、もう60歳を超えた人の“100点”だから、思いがあまりにも高くて。 でも、いつかそうなりたいから頑張れる。“頑張る”っていうのはおかしいかな。“やり続ける”かな」 取材も終わりに近づき、雑談まじりで今もっとも気になるバンドは何かと尋ねると、IDLESだという答えが返ってきた。 「去年フジロックで観て、すごくいいライブだった。コミュニティ感のあるライブではなく、いい意味で“バンドとお客”という関係性ができていて、すごく面白かったんです。イギリスのバンドはイギリスで見るのが一番なんで、今度、アイドルズを観るためにイギリスへ行こうと計画中です」 2009年にイギリス・ブリストルで結成され2017年にアルバムデビューした、若きポストパンクバンド・IDLESのことを熱く語るTAYLOW。パンクをより深く知り、どこまでも究めたいというその心持ちも、まだまだ衰え知らずのようであった。 文中敬称略。