66歳の現役パンクロッカー、the原爆オナニーズ・TAYLOWが語る「肉体と精神の変化」。そしてバンドの終わり方
HIKAGEもチャーミーもあっちゃんも、今が一番かっこいい
同じ名古屋出身で、TAYLOWがバンドを始める前から深く交流していた、1977年結成のザ・スタークラブ。そして1981年に大阪で結成し、ボーカルのチャーミーとベースのポンを中心に活動を続けるラフィンノーズ。いずれもフロントマンが60代になっていながら、今もパワフルな2つの同世代バンドの名が挙がった。 「ラフィンのライブはこの前も観たけど、昔と比べると今のステージングのほうがずっと説得力があるように見える。もちろん昔は昔で好きだったし、若い頃のイメージが頭の中にこびりついてるけど、そういうのは関係なく、『あれ、チャーミーかっこいいじゃん』って。 岡村(ポンの本名)かっこいいじゃん。小山(チャーミーの本名)もかっこいいって。トオル君(ドラムスのtoru-wolf。ギターウルフを脱退し、2023年、ラフィンノーズに加入)も今もかっこいい。 鍛錬によるものなんでしょうね。HIKAGEの無駄のない動きも、“俺はこれをこうやりたい”という意思が伝わってくる。 あっちゃん(ニューロティカのボーカル・ATSUSHI)も、へらっとしながらやりたいことを貫いているのがちゃんと分かるし。 みんな歳取ってってるのに、それぞれのハードルが上がってて、なんで?って思う。クライマーズハイみたいなものかな。同世代でずっと続いてるバンドって、どこもそういう感じよな。なんでだろう」 では、TAYLOW自身はなぜ年齢とともに自分のハードルを上げているのかと問うと、少しのあいだ静かに考え、ぽつりとこういった。 「やりたいからかな」 自分を含め同世代のバンドマンたちは皆、“俺はよりよく生きたい”という意識が、年々強くなっている感じがするとTAYLOWは続けた。よりよく生きるために、バンドマンは、よりかっこいいライブをやるしかない。手を抜くのが一番嫌だという思いは、間違いなく共通しているというのだ。
“あ・うんの呼吸”のバンドが、終わる日は来るのか
しかし、2022年11月、まさしく同年代であり、バンドとしてのスタンスも近しく、対バンも数多かった盟友とも言えるハードコアパンクバンド・ガーゼが、41年もの活動歴に終止符を打った。 the原爆オナニーズと同じく、メンバーそれぞれが音楽以外の仕事を持ち、生活基盤を保ちつつ活動を継続してきたガーゼ。まったく手を抜かない全力のライブで、ファンを魅了してきたバンドだった。 TAYLOWはそんなガーゼの解散に、自分のバンドの境遇を重ね合わせることはないのだろうか。 「ガーゼの事情については時系列でずっと話を聞いていて、解散決定もいち早く伝えてもらいました。それを聞いたときは、うちもいつかはそうなるのかなって考えなかったわけではないです。ただ今のところ、そこまで深く考えることもないかなと。4人揃ってリハを始めると、『OK!』って思えますから。 今日(2024年5月25日、東京・下北沢CLUB Queでライブが行われる日。本インタビューはリハーサルと本番の間に敢行した)のリハのとき、冗談っぽく『(午後)9時過ぎると調子悪くなるから。声が出なくなるかもしれませんよ』って言ったけど、今年の2月にコロナにかかったあと、気管支がイマイチの時があって。あんなふうに言っとけば、周りの人は分かってくれるから。『もう年寄りだもんな』とか(笑)。 だけどうちのバンドのメンバーは、誰かの調子がおかしいときは、ぱっとカバーしてくれる。僕の声が出てないって気づくと、すぐ何とかしようとしてくれるんです。すごいですよ、そういう“あ・うんの呼吸”は」 取材後に見たライブ本番でのTAYLOWは、不安を抱えているとは到底思えない、完璧で激しいステージングだった。“あ・うんの呼吸”によってメンバーが補った結果だったのかもしれないが、少なくてもフロアにいるファンには、そんなことはまったく感じさせなかった。 「誰かの調子がおかしかったら、誰かが必ずカバーするという4人の合体感。考えてないのよそんなこと、頭の中では絶対に。ただ、会得してる感じ。 座禅を組んで息整えて、修行を積んだことのように、頭よりも体で分かってるみたいなところはある。 そんな感じのバンドなのかなって。 シノブ(ギターのSHINOBU)が映画(2020年に公開されたthe原爆オナニーズを追ったドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』)の中で言ってたみたいに、バンドはこのままずっと続けるんじゃないのかなって思ってる」