酷評スタートの朝ドラ『おむすび』が、震災の描写でムードが一変…!これから訪れる「本当の勝負」
現代劇ばかり批判を受ける背景
朝ドラが8時ちょうどのスタートになり、2000年代の低迷期にピリオドを打った2010年の『ゲゲゲの女房』以降、『てっぱん』『純と愛』『あまちゃん』『まれ』『半分、青い。』『おかえりモネ』『ちむどんどん』『舞いあがれ!』などの現代劇が放送されてきた。 朝ドラのメインである“戦前戦後が舞台の偉人一代記”と比べると批判を浴びた作品が多く、『おむすび』の序盤も同様だった。特に『ちむどんどん』以降は「#反省会」の浸透もあってスタッフとキャストは厳しい視線にさらされている。 戦前戦後が舞台の偉人一代記は、モデルとなる人物がいて、厳しい時期を史実通りに再現していくため叩かれにくいが、オリジナルの現代劇は「小さなスキを見せただけで人々から叩かれる」という厳しい環境。さらに「朝ドラの批判記事はPVが取れる」がネットメディアのセオリーになったことで、ネガティブなムードに火が点きやすく、消えにくくなった。 『おむすび』はスタート時からネット上の動きを追いかけてきたが、決して批判だけではなく、「気楽に見られる」「現代劇も楽しい」「『虎に翼』は重かったからこれくらいがいい」などの好意的な声も少なくない。 ただ、朝ドラは批判をピックアップし、失敗作のように扱うほどPVを取りやすいため、多くのネットメディアが酷評記事を乱発している。だからこそ、ここから来年1月17日までの物語で、その流れをできるだけ覆しておきたいところだろう。
「令和」の結はどんな人物なのか
ところが、その大きなターニングポイントとなる来年1月17日の放送を終えても、まだ残り2ヵ月強の期間が残っている。やはり週5日×半年間にわたる朝ドラの放送期間は長く、最後は「結の成長や成功をどのレベルまで描くか」の選択が鍵を握るのではないか。 ホームページの「この番組について」という番組紹介欄には、「主人公・米田結が、激動の平成・令和を思い切り楽しく、時に悩みながらもパワフルに突き進みます!」という記述がある。“令和”まで描かれることは確定であり、30代に突入した結の姿が描かれるのだろう。その時、結はどれだけ視聴者から「続きが見たい」と愛される主人公になっているのか。 もともと「NHK大阪放送局が制作する朝ドラは年末年始の中断をはさむため構成が難しい」と言われ続けてきた。年末に1つ目の大きな見せ場がほしいし、年明けの1月末から2月頭あたりにも何らかのピークを持ってくる作品が多い。さらに3月末の最終回に向かうクライマックスも必要になる。 加えて『おむすび』には阪神・淡路大震災から30年という1月17日の節目も加わるだけに、どう構成するかによって視聴者の印象は大きく変わるだろう。「あえて難しいオリジナルの現代劇を選び、阪神・淡路大震災を真っ向から扱う」という気骨ある当作のスタッフには、その高いハードルを超えてほしい。
木村 隆志(コラムニスト/コンサルタント)