酷評スタートの朝ドラ『おむすび』が、震災の描写でムードが一変…!これから訪れる「本当の勝負」
結の進路はすでに明かされている
しかし、だからこそ結の恋をどう描くかが大切になる。視聴者に「結と翔也の恋を応援したい」と思わせられるか。「結と翔也に結婚してほしい」と思わせられるのか。結が翔也への恋心を自覚するシーンが1つの試金石になりそうだ。 さらに第7週では、高校卒業に向けた進路の選択も描かれるという。 制作サイドは放送前から「2007年 再びの神戸編」があることを発表していた。それを知らなかった人も連日の放送を見ていれば、父・聖人(北村有起哉)や姉・歩の言動から、一家がいずれ神戸に戻ることに気づいていたのではないか。 また、ホームページ、番宣番組、ネット記事などでも、結が高校卒業後に栄養士を目指すことが明かされていた。これもそのきっかけが第7週で描かれるだけに、夢と自覚するまでの経緯をどう描くのか。説得力のあるシーンが必要だろう。 いずれにしても、現代劇の朝ドラヒロインが高校卒業を控えて進路に悩むのは定番の流れであり、「夢を見つけて舞台となる場所が移り、第2章がスタート」という展開も定番。視聴者がその後の物語に興味を持つためには、やはり第7週が重要になる。 ただ、当然ながら重要なのは第7週だけではない。冒頭にあげたように、阪神・淡路大震災からちょうど30年となる年明け1月17日という大きな節目まで、どのように物語をつないでいくのか。11月18日からの第8週から1月13日からの第15週までの8週間、どんな物語をつむいで視聴者を引きつけていくのか。 もしこの8週間にわたる物語が盛り上がらなければ、序盤のネガティブなムードが再燃するだろう。むしろ一度、阪神・淡路大震災を真っ向から扱ったことで、求められる人間ドラマのハードルは上がったのかもしれない。
成否の鍵を握るのは神戸の人々
では震災当日までの8週間では何が描かれるのか。 ここまでは物語の大半が結のエピソードだったが、今後は周辺の人々の人生もしっかり描かれていくだろう。特に舞台が神戸に移ることで震災の当事者たちが多数登場する。 商店街で靴店を営み、娘を亡くした渡辺孝雄(緒形直人)、パン屋を営む佐久間美佐江(キムラ緑子)と娘で結の幼なじみの菜摘(田畑志真)、神戸の復興に努める市役所職員・若林建夫(新納慎也)、歩の旧友で古着店の店主・チャンミカ(松井玲奈)、小学校教師・大崎彰(ミルクボーイ・内海崇)など、愛すべきキャラクターのエピソードで引きつけたいところだろう。 なかでも震災発生後、結たちが糸島に行ったあとや傷心から再生する心理描写は共感を誘い、1月17日への感情移入につながるのではないか。また、理髪店を再開する父・聖人と、それを支える母・愛子(麻生久美子)、親友・真紀(大島美優)を失った過去を引きずる姉・歩の心境がどう変わっていくのかも注目されそうだ。 もう1つ成否の鍵を握りそうなのが、結が入学する栄養専門学校の関係者たち。ここで役柄の説明は控えるが、同級生の矢吹沙智(山本舞香)、湯上佳純(平祐奈)、森川学(小手伸也)、担任・桜庭真知子(相武紗季)と講師・石渡常次(水間ロン)も重要な役割を担っている。 商店街の人々とともに栄養専門学校の関係者が愛されるほど、作品そのものへの支持につながっていく。戦前戦後の厳しい描写がない現代劇の朝ドラは主人公以外のキャラクターが愛されなければ「物足りない」「退屈」などと言われやすいだけに、脚本・演出の出来が評判を左右するだろう。 もちろん栄養専門学校での実習も見どころの1つであり、結の就職活動も注目のポイント。さらに、翔也との恋はどんな方向へ進んでいくのか。朝ドラヒロインの多くに結婚のシーンがあるだけに、それが描かれる時期も作品の評判を左右するかもしれない。