話し合いを避け続けた結果「気を遣ってプロポーズ」してしまった彼氏…〈『さよならプロポーズ』第2話〉
「冷静なオトコ」と「感受性豊かなオンナ」、話し合いの難しさが如実に
アオイとモナの2日目の始まりも、前日の修羅場などなかったかのように穏やかだ。カジュアルなペアルック風コーデに身を包んだ2人はサマになっていて、誰が見てもお似合いのカップル。海ではしゃぐ2人は、まるでハネムーンに来た夫婦のような親密な距離感だ。前日にケンカが起こりかけた時のアオイの寄り添いが効いたのか、アオイに不信感を持ってしまっているモナも、ポジティブに2人の時間を楽しんでいた――その矢先のことだった。 知り合いの前で堂々とプロポーズをしたアオイがモナに渡していた婚約指輪は、キラキラ輝くカルティエの大粒ダイヤリング。モナは婚約指輪をアオイに返却し、旅の決意表明をした。アオイからすれば、プライドが大きく傷つくことだったかもしれない。しかし、冷静なアオイは怒りをあらわにすることもなく、プレゼントした指輪と、白紙の婚姻届を受け取った。 話し合いとなると感情的になりやすいモナだが、行動力がある女性でもある。何も変わらないこと、前に進めないことを良しとせず、指輪を返却したことによって、少なくとも旅行前とは違う関係値に持っていった。勇気を持たねばできないことだし、関係性が変われば、お互いの気持ちにも変化が生まれやすいはずだ。 しかし、いざ話し合ってみると、どうしても同じ問題ですれ違ってしまう2人。「ありがとう」を言葉にして伝えてみたり、相手の意見を遮らずに聞こうとしたり、よい話し合いができるように2人とも努力しているのに、どうしてもヒートアップしてしまうのだ。 モナが親友に言われていたように、2人に「価値観の違い」があることは明白だ。親友の言う通り、合わないなら別れるのも一つの手なのかもしれないが、それでも2人はその価値観をすり合わせるために、この旅にやってきた。 アオイから求められたいモナと、どうしてもモナからの具体的な提案を求めてしまうアオイ。愛情という、抽象的な物事について話し合うことの難しさも相まって、話はすぐに脱線していってしまう。冷静で頭の回るアオイに具体化されてしまった結果、今回も話は「時間の使い方」の方にそれてしまった。 話し合いをしている最中に「そういう話をしているんじゃない」と思ったことがある人は少なくないだろう。人とはどうしても、自分の話したい方向に話題を持っていこうとしてしまうものだ。2人が互いに「自分の話を聞いてよ」と求め続ける限り、何度話し合ったとしてもうまくいかないのかもしれない。 一向に交わらない思いにぶつけ合いに、先に音を上げてしまったのはモナだった。アオイに背を向け、嫌な気持ちから逃げ出すように歩き出してしまう。……本当に、話し合いって難しい。話を続けることも、とても難しい。