【視点】辺野古「ワンイシュー」は終わった
衆院選が公示され、沖縄では4つの選挙区で計16人が立候補した。いずれの選挙区も、玉城デニー知事を支え、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力と自民党候補の対決を軸に、れいわ、維新、参政党などが参戦し、激しい選挙戦を展開している。 「オール沖縄」勢力が誕生した10年前の衆院選と比べると、各候補が打ち出す政策や主張も多彩になった。 10年前は辺野古移設の是非が「ワンイシュー」として問われる雰囲気だった。 今選挙では自民党の裏金問題に伴う政治改革、物価高騰対策、自衛隊の「南西シフト」、日米地位協定の改定などが争点になっている。 沖縄の国政選挙は辺野古「ワンイシュー」という異常な状況から脱した。有権者が沖縄の将来について冷静に考えることができる環境がようやく整った、ということだろう。 沖縄が抱える問題は多岐にわたるが、大きなものは米軍基地問題と沖縄振興だと言われる。辺野古移設問題は数ある米軍基地問題のカテゴリーの一つに過ぎない。 しかし10年前、当時の翁長雄志県政が辺野古移設反対を「県政運営の柱」と位置づけたことで、この問題が不当に肥大化した。ついには有権者の間に、辺野古移設の行方がそのまま沖縄の将来を決するかのような、誤ったイメージすら生んだ。 この間、沖縄振興、さらに離島住民にとって最大の関心事である離島振興が隅に追いやられた。「離島振興なくして沖縄振興なし」という掛け声がむなしく響く状況が続く。 八重山、宮古を含む4区はもともと辺野古移設の是非が争点化されなかったが、今選挙でも4人の候補者の演説を聞くと、政治改革、物価高騰対策、所得向上、教育費の無償化などがテーマに挙がっている。 他の選挙区で「オール沖縄」勢力の候補者の訴えを聞いても、辺野古移設の是非は多数の争点の中の一つとして扱われ、この問題だけを正面に打ち出して戦う候補は、もういないようだ。 玉城県政と国の法廷闘争は、国の勝利でほぼ決着した。移設工事が進展する中、移設阻止は現実的な政策ではなくなりつつある。 気になるのは、4区の候補者でも、特に離島振興に焦点を当てて訴える候補者が少ないことだ。 国政選挙で離島振興はどうしてもマイナーなテーマだが、先の自民党総裁選では台湾有事との関連で、対中最前線としての国境離島の重要性が改めてクローズアップされた。 総裁選の活動で積極的に離島を訪れ、離島支援の重要性を強調した総裁候補もいた。それを考えると、当の沖縄の候補者たちの離島に対する認識は、中央政界に比べてさえ、一歩も二歩も遅れている。 沖縄の国政選挙は沖縄本島が主戦場になるため、離島ではどうしても候補者不在の選挙戦となり、有権者の関心も低迷しがちだ。 基地問題にせよ沖縄振興にせよ、沖縄は重要な転換点に差し掛かっている。有権者は貴重な一票をむだにせず、主体的に政治を監視する意識を持ちたい。