東京五輪覇者の30歳永瀬貴規、男子81キロ級史上初の連覇 柔道日本男子で史上最年長の金&2人目の3大会連続メダル【パリ五輪】
◆パリ五輪 柔道男子81キロ級(30日、シャンドマルス・アリーナ) 東京五輪覇者の永瀬貴規(旭化成)=長崎市出身=が決勝に臨み、グリガラシビリ(ジョージア)を破って2大会連続の金メダルを獲得した。 ■美しく輝くエッフェル塔、パリ五輪開会式中の街の様子は…【写真】 2016年リオデジャネイロ五輪では銅メダルに輝いており、日本男子では史上2人目で、1996年のアトランタ大会から2004年のアテネ大会まで3連覇を成し遂げた野村忠宏以来。30歳9カ月での金メダルは日本男子では史上最年長となった。 ◇ ◇ 連覇だけを見据えた畳だった。これまでの実績を認められ、昨年8月にパリ五輪代表の内定を得ただけに「早めに内定をいただいたからこそ、しっかり結果を残さないといけない」。責任感の強い永瀬らしく意気込んでいた。 求道者のように自らを厳しく鍛え続け、長く一線で活躍する。ただ東京大会後は国際大会でなかなか優勝できず、満足のいく結果を出せなかった。高い期待を意気に感じ、応えようとすればするほど苦しくなった。昨年12月に開催されたグランドスラム(GS)東京は3回戦で敗れた。「自分の柔道の軸が少しぶれている。今は強くなるための試練」と受け止めてもがき続けた。 一方で地元から力も得た。新型コロナウイルス禍の時期に試合ができなくなった時は「永瀬杯」と銘打って子ども向けの大会を主催した。その後も「自分が何か役に立つのなら」と開催しており、副賞として永瀬自身が子どもたちの道場に行くサプライズプレゼントなども行ってきた。勝っても負けても、一生懸命に感情をむき出しする子どもたちの様子に「昔の自分を見ているようだった」と原点を思い出すこともできたことも大きなモチベーションとなった。 30歳で迎える3度目の五輪だ。これまでとは心境にも大きな変化がある。「1度目は挑戦、2度目はリベンジ、今回は連覇。年齢的にも次は厳しいことは分かっている。パリは自分の柔道人生を懸けてもいい大会」と言い切る。柔道発祥国の代表として、常に重圧を背負ってきたが「楽しもうと思って出る大会ではない。五輪はいろんなものを犠牲にしないといけない。ただ、犠牲にしてもいいほどの素晴らしい大会」と常に口にしてきた永瀬が、再び歓喜に浸った。 初戦となった2回戦でウルグアイ選手に冷静な試合運びを見せた。内股で技ありを奪い、そのまま上四方固めで抑え込んで合わせ技一本勝ち。3回戦はトルコ選手に組み手争いで優勢に立ち、圧力をかけた。延長戦にもつれ込むと、内股で技ありを奪い優勢勝ちを収めた。 準々決勝は東京五輪の銅メダリストで、昨年のドーハ世界選手権では銀メダルを獲得したマティアス・カス(ベルギー)。相手の力強い組み手に苦しんだが、延長戦では積極的に足技を繰り出して揺さぶった。大外刈りで技ありとし優勢勝ちした。 準決勝はエスポジト(イタリア)。警戒する相手を組み止め、支え釣り込み足で技ありを奪い、もつれたところを寝技で抑え込み、合わせ技で一本勝ちした。 ◆永瀬 貴規(ながせ・たかのり)、1993年10月14日生まれ。30歳。長崎市出身。2021年東京五輪金メダル、16年のリオデジャネイロ五輪は銅メダル。世界選手権は15年に優勝、22、23年は3位となった。全日本選抜体重別選手権は14年から優勝6度。得意は大内刈り、内股。長崎日大高から筑波大を経て旭化成。182センチ。
西日本新聞社