「負のスパイラルから抜けるのが難しい日本」でディーン・フジオカが起こした行動
俳優・ディーン・フジオカさんは高校卒業後、アメリカに留学。2004年に香港でモデルとしての活動をスタートし、2005年に映画の主演に抜擢されて俳優デビューした。その後台北に拠点を移して、映画やCMに出演。2009年には音楽制作の拠点をインドネシアのジャカルタに移した。2011年から日本で俳優、ミュージシャンとして大活躍しているのはご存じの通りだ。つまり世界をまたいで生活し、活動していることになる。 【画像】クールでやさしいディーン・フジオカさんの表情 そんなディーンさんが人気アニメシリーズ『きかんしゃトーマス』の劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス 大冒険! ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』(4月19日公開)に、ゲスト声優として出演する。 様々な言語で海外の作品にも多く出演するディーンさんは世界的に人気なこのアニメにどのように向き合ったのか。インタビュー前編では、トーマスたちが未知の山に入っていく大冒険をしたように、海外に出るという「大冒険」をした自身のことを伺った。後編では、ディーンさんの仕事に対する向き合い方と今ライフワークにしているというSDGsの活動についてさらに話を伺う。
マルチリンガルだからこそ、こだわったこと
今回、ディーンさんが声優として演じたのは、トーマスたちの謎解きにヒントをくれるウィフ役だ。彼はリサイクル工場でさまざまな実験を行っている。丸メガネがトレードマークの前向きで陽気で大人なのにちょっととぼけたキャラクターだ。インタビュー中もジョークを織り交ぜて穏やかに話すディーンさんは、ウィフとかぶる部分があるが、擬人化した存在を演じるのは、今回初めてだったという。 「通常だと役柄の仕事や背景などをリサーチして、その役柄に近づいていくという作業に時間をかけたりします。今回のウィフは、廃品を集め、新しい何かを作るアップサイクル(創造的再利用)をしているんですね。アップサイクル(創造的再利用)自体は、僕自身とても関心があることですが、今回そこは重要ではなかったですね(笑)。 収録に入る前に、ディレクターから、“オリジナルの英語版を観ますか? ”と提案していただきました。日本の作品の場合は、まず台本を読んで、監督などとディスカッションして役柄を作り上げていきますが、今回はオリジナル作品を観たことで、作品が伝えたいイメージを感じ取ることが出来ました。オリジナルを知ったことで、より翻訳した方や脚本家の意図がよくわかりました。 表現するということは、言葉では伝えきれない、ニュアンスの部分を表すことでもあると思うんです。オリジナルを観て、ウィフが帯びている空気感や作品内での立ち位置を掴むことができました。それは単にコピーをするという意味ではなく、原作のいい部分、伝えたい部分がどこかに残ることを意識し、表現していきました」 海外の作品にも多く出演するディーンさんは、「言語の違い」についても考え、配慮することが多いと話す。日本語以外の言語も話すことができるディーンさんは他言語と日本語の「尺の違い」を感じることがあるという。英語は日本語に比べて時間的密度が濃い。日本語なら10秒かかることが半分の時間で伝えられることもある。 「同じ意味のフレーズでも、言語が違うと当然、言葉の数は変わってきます。また、どこにアクセントを置くか、緩急の付け方も違うことが多い。言葉を発してそのあたりが異なってしまうと、空気感が違ってしまうこともあります。また、トーンの高低、吐く息の緩急、ボリュームの強弱などで含む意味やニュアンスが変わっていく。そういった意味でもオリジナル版で空気感をつかむ作業はとても参考になりましたね。今回、声の演技をするのは2回目なのですが、アフレコには高い技術が必要だと改めて感じました」 作品を観るとわかるのだが、ウィフの声を聞いても、「ディーンさんだとは気づかなかった」という声が多かったという。実際に観て同じような感想を持った。 「僕が演じたのは、ディーン・フジオカではなくウィフなので、気付かれないということはうれしいですね。最後にクレジットを見て“どこに出ていたの? ”と思っていただけるのが本望です」