楽天、阪神が挑む「育成と勝負」は両立するか
楽天と阪神の2チームで決定的に違うのは、ベテラン、主軸との融合の度合いである。 楽天は 松井稼頭央(40)、銀次(28)、今江敏晃(32)が不振で2軍落ち。正捕手、嶋基宏(31)は、左手の骨折で長期離脱を余儀なくされている。仕方なく若手起用に踏み切らざるをえなかった楽天だが、交流戦中に、エースの則本昴大(25)が無傷の3勝、4番のウィーラーが7本、16打点の爆発を見せ、横浜DeNA戦では、ベテランの藤田一也(33)が活躍するなど、残っているチームのベテラン、主軸が機能している。 しかも、茂木はコンスタントに結果を残し立派なレギュラーだ。 前述したフロントの話が象徴的だが、世代交代ではなく、これから復帰してくるベテランとの融合を念頭においている。今後、新外国人を獲得することも決定しており、途中入団の新外国人は未知数だが、あくまでも若手は、プラス材料であるというチームコンセプトは明確。苦しいピッチングスタッフに若い戦力の台頭がないのが課題で、ブルペンにも不安は抱えているが、今後、融合がうまく運べば、ソフトバンクを倒すことは無理だとしても、育成と勝負が両立していく可能性も見えてくる。 一方の阪神は、鳥谷敬(34)が、5試合、25打席ヒットがなく、ゴメス(31)が7打席連続三振でスタメン落ちするなど主軸が大不振で若手との融合が見られない。新外国人のヘイグ(30)も2軍に落ちているが、再生させて起用する考えも1軍の現場サイドにはないようで、ベテラン、主軸との融合よりも、若手の育成によりスタンスを置いているように見える。 これまで、生え抜きの若手育成が、阪神の長年の命題で、そこに大胆に手をつけた金本監督のリーダーシップは評価されるが、ベテラン、主軸との融合があってこその「超変革」であることが置き去りなっている。現在、鳥谷を1番で“我慢起用”しているが、この主軸への我慢は、4月にやっておくべきだったのだろう。ただ、楽天と違い、今後、復帰してくる戦力が見込めないのだから、なおさら世代交代に活路を求めるしか手がなくなっている。そう考えると、そういうチーム編成をしているフロントの責任は大で、現場とフロントのコミュニケーションも足りない。 セ・リーグは、広島以下の5球団が借金生活という混戦状態で、阪神に優勝チャンスは十分にある。若手で結果を残しているのは、原口一人で、高山も含めて多くの若手が壁にぶつかってはいるが、「育成と勝負」が両立することを証明するための環境は整っているのだ。