狂ったイラン政府はどう「人の尊厳」を奪うのか…ノーベル平和賞活動家が明かす受けた卑劣過ぎる「やり口」
曲げない信念
2~3日を彼女と過ごせたのは神の恵みだった。彼女はクルディスタンから209棟に連れて来られた。尋問官たちに、武装作戦に加わったことを動画で自白するようにと、何度も言われたらしい。彼女は嘘の自白をすることを拒んだ。ゼイナブが209棟にいた間、ある囚人について元気の出る話をしてくれて、イランの刑務所に明るい光明を見たような気がした。 ゼイナブが言うには、ある女性が、グリーン・ムーブメント(民主化運動)のリーダーのひとりを貶めるような内容の手紙を書けと言われ、ものすごいプレッシャーを受け、病気になりながらも、その手紙を書かなかったのだそうだ。 ゼイナブの抵抗する意志と心意気を見ていて、彼女の他の側面、ヒューマニストとしての断固たる、揺るぎない信念も分かってきた。私は独房に収監された3回の経験のなかで、固い意志と決意で立ち向かう素晴らしい男女の存在を知った。彼らは自分の体と心の健康を犠牲にしても、のしかかる重圧に耐え、自分の信念を曲げない。
全てを知られている
私は保釈されるとすぐに入院して治療を受けた。ところが当局が病院の記録を取りあげた。のちに尋問されたときにこの理由を聞くと、答えは「諜報治安省の医師は、あんたの医師よりも経験がある」というものだった。 この発言にはずいぶん考えさせられた。私の主任尋問官は私の気質、つまり興味の対象や、私が嫌うものをよく知っている。私がいつも何か噛む癖があることや、彼の言葉によると、私が書く内容、あるいはイラン・エンジニアリング・インスペクション・カンパニーでの交友関係、私と夫とのことまで、彼は何でも知っていた。なぜ彼はこれほどまでに私の心の中に詳しかったのか? 私についての情報を徹底的に集めたのは何のためだったのか? おそらく彼は私の持病や常備薬、治療、私の身体的、精神的弱みを把握して操ろうとしていたのだ。なぜなら、彼に言わせれば、私はまだ無罪放免ではなかったから。 『医者も看護師も一緒になって尋問…「長時間の拷問」で倒れた女性が運ばれた「イラン刑務所の病院」がヤバすぎる』へ続く
ナルゲス・モハンマディ