“魔球”シンカーを操る早大・安田は愛すべき野球小僧
東京六大学野球の本拠地・神宮球場。3日に行われた明大―法大1回戦。明大が負ければ早大の春秋連覇が決まる一戦の試合途中に、見慣れた男が現れた。「このカードは必須科目なので」と独特の表現で目を輝かせていたのが早大の右腕・安田虎汰郎(1年=日大三)だった。「練習が終わって間に合うと思って来ました」とスタンドから熱心に観戦、翌日は練習が休みで試合前からスタンドに陣取っていた。 中指と薬指から抜くシンカーともチェンジアップとも言える“魔球”を操り、日大三時代はU―18高校日本代表に選出された。春には開幕戦でともに救援、1年生では初となる2勝をマークして早大投手陣には欠かすことのできない存在になっている。 まさに野球小僧である。時間が許せば東都大学野球、夏には都市対抗野球と野球あるところに安田あり。親しい記者たちも「また安田が来ているよ」が合い言葉になっているほど、可愛い選手なのだ。しかし安田は真剣だ。「試合を見る中で気づくことがたくさんあります。自分の試合に生かせていければ」と研究熱心は群を抜く。 現在はストッパー田和廉(3年=早実)の前に登板する中継ぎ役。明大戦でも楽天1位の宗山塁(広陵)と対戦し「ここは分かっていてもシンカーで行くしかない」と度胸で遊ゴロに打ち取った。9日からの慶大戦は1勝すれば15年以来の春秋連覇が決まる。「登板機会があったら絶対抑えてみせます」と大一番に備え調整に汗を流している。 <安田ってこんな男> ◎春の明大戦で好投。「この試合に備えて空き週の間、部屋で明治の校歌、応援歌を音量を大きくして聞いていました」 ◎ヒーローとなり試合後会見場に到着。まだ小宮山監督が来ておらず報道陣から「先に座ってなよ」と言われても「とんでもないです。監督さんより先に座っているなんてとてもできません」と謙虚。 ◎東都大学に現れ報道陣から「デートしたり他に行く所はないの?」と言われても「いやデートなんて。野球を見ているのが一番です」と試合終了までしっかり観戦している。 ◎故障知らず。「ボクの実家は鴨川(千葉)の漁師なので船に乗ってから小学校にいってました。投手も高校からなので肩は酷使してません」。西鉄の大エース稲尾投手のように船に乗って足腰を鍛えた成果が強靱な体を作っている。 ◎頭の中は常に配球。高校時代、U18の壮行試合(東京ドーム)で上田(明大―ロッテ)にアーチを浴びた。「初見で宗山さんにシンカーを打たれ、狙われてるなと思ってストレートで様子を見ようと投げたのが甘くなって打たれました。まだ甘いです」と、この経験も生かしている。