清少納言の「令和では炎上発言」に込められた真意 紫式部とはまるで異なる「宮仕え」への考え方
■時には中宮からの「無茶振り」も 帝がお出ましになったときの、このようなエピソードもあります。中宮が「お硯の墨をすりなさい」と仰せになったのですが、清少納言は帝の姿に見惚れてしまい、夢中になってしまう有様でした。 その後、中宮からは白い色紙に「今すぐに頭に思い浮かぶ歌を書いてみなさい」とのご命令がありました。 清少納言にとっては、急な「無茶振り」に、御簾の外にいた大納言に「どうしたら、よいのでしょうか?」と尋ねるしかありませんでした。
大納言は「早く書いてお見せするのだ。男子が差し出がましく意見を述べるべきときではない」とアドバイスします。 中宮からは「さぁ、さぁ、何の思案もいりませんよ。難波津でも何でも構いません。今、頭に浮かんだ歌を書いてごらん」との再びの催促がありました。清少納言は顔を真っ赤にして、しばらく途方に暮れます。 このような中宮からの問いかけは、清少納言だけにあったのではありません。ほかの女房にもあったので、彼女たちは、春の歌や、桜の歌を書いたようですね。
中宮が「無茶振り」をしたのも、中宮から言わせれば、女房たちの機転を知りたかったのでしょう。 (主要参考・引用文献一覧) ・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973) ・石田穣二・訳注『新版 枕草子』上巻(KADOKAWA、1979) ・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985) ・渡辺実・校注『枕草子』(岩波書店、1991) ・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007) ・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)
濱田 浩一郎 :歴史学者、作家、評論家