空飛ぶ海猿、故郷を守る 小松出身の九管の機動救難士 能登半島地震でも出動
第九管区海上保安本部新潟航空基地で、小松市出身の東藤(とうどう)雄亮さん(28)が、「空飛ぶ海猿」と称される機動救難士として海の安全確保に励んでいる。1月には能登半島地震の被災地に派遣され、上空からの情報収集や孤立住民の搬送を担当。惨状を目の当たりにしてショックを受けながらも「故郷を救わなければ」と心を奮い立たせて任務をこなし、人命救助の使命をあらためて胸に刻んだ。 ●潜水士から選抜 潜水士の中から選抜される機動救難士は、主に船上の傷病者や海上で漂流する遭難者をヘリコプターで救助することを任務とする精鋭部隊。全国10基地に計90人が配置されており、東藤さんは石川県出身者で4人目となる。 中学生の頃、機動救難士がヘリコプターから降下する姿をテレビで見たことがきっかけで、海上保安官を志した東藤さん。高校卒業後に海上保安学校に入り、七尾海上保安部や能登海上保安署などで勤務した。 その後、潜水士の選抜試験に合格し、昨年4月、高度な技能が認められて憧れの機動救難士となった。以降も訓練を積んで技能を磨き、一人前の隊員になるための最終関門とされる「100キロ行軍」では、歴代最速タイムを塗り替えてゴールした。 昨年11月に制服を貸与され、正式に出動隊員となった約2カ月後、能登半島地震が起きた。1月4日にヘリコプターで新潟を発って現地へ向かい、孤立集落に降りたって情報を収集。1月中旬には集落の高齢女性や要介護者を金沢までヘリコプターで搬送し、救急隊に引き渡した。 過酷な任務は、機動救難士としての役割を再認識する機会になった。「災害は起きないほうがいいが、万一の際は故郷を救いたい」。かつて勤務した能登の復興を願いながら、新潟の地で海の安全を守っている。