日本は本当に大丈夫か…「物流破綻」がいよいよやってくる「深刻すぎる実態」
国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
物流業界はどう変わるのか?
物流クライシスに関しては、構造的な問題、採用難に加え、新たに「物流の2024年問題」の影響も懸念されている。 働き方改革として2024年度から、物流業界にも時間外労働の上限規制(労働時間の短縮)が適用されるためだ。長時間労働が常態化しており、最も影響が大きい業界の一つと見られている。これに合わせて、厚労省は前日の終業時刻からと翌日の始業時刻までのインターバルを現行基準より数時間延ばすことを検討しており、人手の不足状況がさらに悪化しそうだ。 物流が滞る事態への危機感を募らせる政府は業界団体などと連携して、積載効率の最適化や無人運転トラックの開発、さらには、人工知能(AI)を活用して輸送ルートや保管場所の最適化を図る「フィジカルインターネット」などの普及を模索している。 もちろん、こうした取り組みも重要だが、どんなに省人化を進めても「モノを運ぶ仕事」から人間をゼロにすることはできない。洗濯機やエアコンのように運ぶだけでなく、取り付けまで行うことを求められる商品が少なくないからだ。 人手不足が極まって、部分的な物流の目詰まりが頻発するようになれば、やがては国内におけるサプライチェーン網を弱体化させる。必要なタイミングで部品や商品が届かない事態が恒常的に起きるようになれば、荷主企業にとっても経営の根幹を揺るがす問題となる。 物流を支える運送会社は「公的サービス」として位置づけるべき社会インフラだが、これまで多くの企業経営者の発想といえば「できるだけ価格の低い運送会社に頼んで、コストを抑えられるだけ抑えたほうがよい」というものだった。 しかしながら、人口減少が進む中で即日配達や時間指定配達で一日に何度も運んでもらうといった“贅沢な使い方”が長く続くはずがない。今後は「利益に見合うコストで運んでもらえるのか」と運送会社にお伺いを立てなければならない時代へと変わるだろう。“物流の破綻”が現実のものになるとはそういうことである。 もし、お金を積んでも荷物を運んでもらえるとは限らない社会になったならば運送コストは上昇し続け、企業の利益が吹き飛び、あるいはビジネスチャンスを逸することにもなりかねない。そうなれば、ただでさえ縮んでいく国内マーケットをさらに縮小させる。 米国のアマゾンは、物流革命がその国の経済成長のカギを握ることを証明した。だが、日本においては中高年が綱渡りで物流網を何とか維持している現実を直視し、破綻を回避する策を考えなければならない。物流クライシスは差し迫っている。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)