MLBも野球の将来に危機感!老舗のレ軍が子供を照準に始めた戦略
大リーグ老舗球団による子供をターゲットとしたマーケティング活動が話題を呼んでいる。今年のレッドソックスは「Calling All Kids」がテーマ。「チビっ子、全員集合!」というところか。歴史と伝統を誇る人気球団が、今なぜ“子供”なのか。その背景を探り、本拠地フェンウェイパークを“子供に優しい空間”にするための取り組みを紹介したい。 今季から右翼外野席側にキッズの頭文字Kを示すKゲートができた。そこから入場すると、まるで縁日に足を踏み入れたよう。大道芸人がパフォーマンスをみせ、フェイスペイント、風船細工のサービスが受けられるキッズコンコースに出る。通路では係員が子供にリストバンドやステッカーを配布。試合前の時間を十分満喫できるよう、開門は去年より30分早い試合開始2時間前となった。 目玉はKゲート近くに新設された「ウォーリーのクラブハウス」。球団マスコットの名前に由来する同施設は毎試合3回から7回までオープン。ウォーリーが来場し、手品師や似顔絵描きがエンターテイメントを提供、輪投げ、ブロック遊びやWiiもできるが、実質は「9イニングもたない」小さな子供達の逃避遊技場の意味合いが強い。ボストンの春は凍えるような寒い日も多く、夏場は脱水症状になる程暑い日もある。冷暖房完備の室内で冷えた体を温めたり、涼をとる。すぐ飽きて歩き回る子供や疲れてグズグズ言い始めた子供が、親と一緒に休める憩いの場として評判は上々。球団はこのため係員を20人増員した。 “子供に優しい空間”を目指す試みはもっとある。肌寒い4月のナイターの開始時間を1時間繰り上げ、チケット価格も安く設定した。売店で販売されるキッズミールは「ピーナツバター&ジャムのサンドイッチ、クラッカー、ジュース」の3品で5ドル。球場内のフードは割高な印象がある中、良心的価格で「ポップコーンとコーラ」より栄養のバランスもいい。デーゲーム終了後、子供がベースランニングできるイベントも大人気だ。 球場外での試みは、去年まで30ドルだった子供会の入会金を無料化。先着25000人に無料チケットを提供した。球団主催の子供向け行事に参加でき、グッズ購買の際に10%割引優待を受ける。オンライン受付もあり、14歳以下なら海外からの入会も可。無料チケットは全て出払ったが、入会は今も増加中で5万人に近づく勢いだ。2012年4月まで足掛け11年に渡って米国4大プロスポーツ史上最多となる本拠地公式戦820試合完売記録を達成した人気球団が、なぜ、実質的な収益カットに踏み切ったのか。球団のマーケティング&ブランド開発を担当するアダム・グロスマン上級副社長は語る。 「我々は幸運にもMLBとレッドソックスという2つのブランドのお陰で世代を超えたファンに親しまれてきましたが、次世代でも自動的に今のブランドバリューを維持できるとは考えていません。嗜好の多様化があり、若者世代の野球離れが叫ばれ、安穏としてはいられないのです。戦略の中核は、1.子供が来場し易い環境を整える。2.球場での子連れ客へのサービスの向上。3.地域の野球人気の興隆という3つの鍵。長期的な展望を見据えたビジネスプランです」