ホームセンターの生き残りをかけたPB戦略 大手メーカーが支配する市場参入のカギは細分化
◆ニッチな分野に勝機を見出し、大手メーカーの牙城に迫る コスパ・タイパに応える細分化された商品に高まるニーズ
カインズのオリジナル商品は「使いやすく」をテーマに、顧客や店舗スタッフの声を反映し、生活者の不便さを改善していくことを軸に商品開発を行ってきた。 そんななかで生まれたヒットが、2019年発売の「プロ仕様洗剤シリーズ」だ。「鏡のうろこ取り」「トイレの尿石取り」「ヤニ汚れ落とし」「キッチンのコゲおとし」「冷蔵庫の自動製氷機クリーナー」など目的ごとに細分化し高機能化した商品群が生活者のニーズに刺さり、ヒットシリーズとなった。当初は11アイテムでスタートしたが、使用する場所やシーンごとの商品開発を加速し、現在までに51アイテムに増えている。 洗剤といえば、圧倒的な知名度のナショナルブランド(NB)を有する大手メーカーの牙城。そんな市場へオリジナル商品で参入した経緯を、カインズの中村敦さんは「いわゆるブルーオーシャン(空白地帯)と呼ばれるようなニッチな商品カテゴリを狙いました」と語る。 「襟や袖の汚れ落とし、シミ取りといった細かいニーズに応える洗剤は、過去に私が知りうる限りでは家庭用に使いやすく開発された商品がありませんでした。これを作ることができれば、カインズとしてお客様のくらしの役に立てると思い開発に踏み切りました」(中村さん) 前例がなく、売れるかわからないニッチな分野に踏み込む商品の開発には、社内の説得に時間がかかったという。最終的には新しいことにチャレンジする社風が追い風となり、商品化が進む。それがヒット商品となり、シリーズ化が実現した。 コスメや美容なども含め、コストやタイムパフォーマンスの観点から、「これ1本で」というオールインワンが日本人には好まれる傾向がある。そうしたなか「細分化される洗剤」がヒットした要因はどこにあるのか。中村さんは「昔と比べると時代の変化がある」という。 「コロナ禍で生活行動の範囲が狭まった中、家の中でも場所ごとに集中的に掃除をする方が増え、そういった掃除道具が多く売れるのと同時に、場所ごとの汚れの落とし方に悩むお客様が多くなりました。背景にくらしの変化があります。軽いものからしつこい汚れまで、場所ごとにも違います。強力なひとつの洗剤で時間をかける掃除は決して楽ではありません。本来は場所別、シーン別に細分化していくべきだと考えています。それぞれに特化した洗浄力を備えて不便を解消したのが、多くの方に使っていただけている理由のひとつだと思っています」(中村さん)