F1ラスベガスGPは、三つ巴の争いになる? 有利予想されるフェラーリとマクラーレンにとっての懸念
F1ラスベガスGPを前に、同じようなサーキットでの過去の成績からフェラーリとマクラーレンがレース前の優勝候補に挙げられているが、ふたつの重要な要素が彼らをつまずかせる可能性がある。 舞台であるラスベガス・ストリップ・サーキットはストレート成分の多い市街地コースであり、今年のイタリアGPを制したフェラーリや、アゼルバイジャンGPを制したマクラーレンが優勝候補に挙げられるのは自然なことだろう。 しかし前回のサンパウロGPでマックス・フェルスタッペンが優勝し、昨年のラスベガスGPではフェルスタッペンが勝利していることも気になるところだ。レッドブルは現行ルールの時代を通じて空力効率に優れたマシンパッケージを持っており、復活を遂げつつあるのであればフェラーリとマクラーレンにとっては無視できないライバルだろう。 昨年のラスベガスGPでは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がポールポジションを獲得。レース1周目の物議を醸すフェルスタッペンとのバトルの末、ルクレールがレースをリードしていたもののセーフティカー出動が逆風となり、フェルスタッペンにオーバーテイクを許してしまった。 昨年のフェラーリのペースの鍵は、F1が通常遭遇しないような寒いコンディションで、フェラーリのマシンがうまくタイヤに熱を加え、機能させられることだった。 しかし今年のサンパウロGPでは、インテルラゴスの冷たい雨の中でペースを落としたことを受け、ルクレールは「今年はタイヤマネジメントで大きな一歩を踏み出した」としつつ、昨年ラスベガスで持っていた強みを失った可能性があると示唆した。 「つまり、(ブラジルで)そうであったように、寒いコンディションやタイヤの温度に関して何かを置き去りにしてしまったということだ。ラスベガスもそのシナリオに似ている」 フェラーリのシミュレータ・シニアエンジニアであるエリック・ファン・デル・ヴィーンは、「シングルプッシュでタイヤを適切なウインドウに入れるのは難しいし、ロングランでウインドウに入れ続けるのも同様に難しい」と説明する。 またラスベガスの路面も、2023年大会の前に敷設されて以来、古くなっている。つまり、路面がわずかに荒れているため、タイヤが路面に食い込み、ドライバーにより高いグリップを提供できるはずだ。 アストンマーティンのパフォーマンス・ディレクターであるトム・マッカローは、「グリップレベルが普段のものに近づき、作業しやすくなることを期待している」と語った。 つまり仮にフェラーリがタイヤのウォームアップの面でのアドバンテージを犠牲にしてレース中のタイヤデグラデーション向上を図っていなかったとしても、ほかチームが総合的なパッケージを改善してくる可能性はある。 アストンマーティンのマッカローは、「アストンマーティンAMR24の特性がこのサーキットに合うようになる」と期待している。 「ラスベガスに最も似ているサーキットはバクーだ。低速コーナーが多く、高速コーナーはほとんどなく、非常に高い空力効率が要求されるサーキットだ」 「パワー依存のストレート区間がラップタイムを出す上で重要だ。ラップタイムのためだけでなく、レースで競うためにも、マシンはストレートで速くなければならない」 つまりフェラーリ自身の変化と、路面の変化で昨年のラスベガスGPでフェラーリがレッドブルに勝っていたタイヤ面でのアドバンテージは無くなっている可能性もあるのだ。 バクーとラスベガスの類似性は、今年ルクレールを破ってオスカー・ピアストリがアゼルバイジャンGPを制したことから、マクラーレンの期待を高める要素でもあるだろう。マクラーレンは今季のイタリアGPでもフロントロウを独占しており、ラスベガスで速さを見せるポテンシャルは十分だ。 ラスベガスは”モンツァ・スペシャル”の低ダウンフォース仕様リヤウイングを使用できるレースでもあるが、マクラーレンはリヤウイングのアッパーエレメントを変更することでFIAと合意したため、イタリアとバクーで使用したウイングを走らせることはできない。 これは、当時のリアウイングパッケージがトップスピードで大きくたわむという”ミニDRS”が物議を醸したためだ。 イタリアGPはレッドブルがマシンセットアップの面で、苦戦の根本的な原因を特定するきっかけとなったレースだと明かしている。 マクラーレンとフェラーリが持っていたアドバンテージが減り、レッドブルがラスベガスでも調子を取り戻していたら……マクラーレンもフェラーリも、9月に行なわれたモンツァとバクーでのストレート勝負よりも、レッドブルとの優勝争いに直面する可能性が高そうだ。
Alex Kalinauckas