飯舘ホップで名物ビール 東大生ら休耕地に栽培 福島市で醸造 10月観光施設などで販売
東京大の学生有志は、福島県飯舘村の休耕地を活用した地ビール造りに乗り出した。農学部生や同大学院生を中心に、原料となるホップを栽培。8月末に収穫後、福島市のクラフトビール醸造所と連携し10月にも新たな名物を誕生させる。醸造過程で飯舘特産のナツハゼなどを加え独自性を打ち出し、村の魅力発信につなげたい考えだ。若い力が東京電力福島第1原発事故の影響を受けた農業の復興や特産品づくりによる地域振興を後押しする。 「飯舘村ホッププロジェクト」と銘打ち、学生15人ほどが今春から村内飯樋の畑約2アールで栽培を続けている。ホップは香りを生むカスケードや苦みをもたらすマグナムなど9品種、計約50株を育てている。学生は月1~2回ほど村を訪れ、葉の剪定(せんてい)や周辺の除草などに取り組んできた。温湿度や風速なども測定できる遠隔カメラで常時監視し、生育状況を確認している。 同大は東日本大震災と原発事故発生後、村の復興支援を続けてきた。昨年、村の現状を調べていた学生らが、ホップの近縁とされ形がよく似ている「カラハナソウ」が山林に自生しているのを見つけた。阿武隈高地に位置し夏でも比較的涼しい村は、耐暑性に弱いホップ栽培に適している―。学生らは地域振興の一手として、地ビール造りへの挑戦を決めた。
醸造は福島市の「イエロービアワークス」が担う。ホップの収穫量にもよるが、200リットル余(350ミリリットル缶400~500本ほど)を仕込む予定。村内の観光施設やインターネットなどで販売していく。プロジェクトの共同代表を務める志賀智寛さん(25)と畑上太陽さん(24)=ともに大学院2年=は「農業活性化や関係人口の拡大につながる事業にしたい」と前を見据える。 ■計画定着・規模拡大目指す 栽培に当たっては地元関係者が生育状況の確認などで協力も得ている。住民同士のつながりを生かし地域にプロジェクトを浸透させ、栽培面積の拡大も見据える。交流サイト(SNS)を積極的に活用し村外からの農業者呼び込みを目指す他、来季はクラウドファンディングによる支援者集めも検討しており、村でホップ栽培を継続させるため力を尽くす。 村の基幹産業は農業だが、原発事故に伴い営農が途絶えた。2017(平成29)年に大部分の避難指示が解除されたものの、2023(令和5)年度末時点で農地2330ヘクタールのうち作付けは760ヘクタールで営農再開率は32・6%だ。杉岡誠村長は「村民や新規就農者にも取り組みが広がり、村の再生発展につながることを期待している」と述べた。
プロジェクトは、福島イノベーション・コースト構想推進機構の「大学等の『復興知』を活用した人材育成基盤構築事業」を活用している。