京都、兵庫に残る延命地蔵を調査して本に 郷土史調査の役にと元福知山市教育委員の瀬田さん
江戸時代中期に作られ、北近畿の寺に現存する「延命地蔵菩薩像」を京都府福知山市夜久野町小倉の元市教育委員、瀬田眞澄さん(81)が調査し、歴史書「日本六大金仏 延命地蔵菩薩像を尋ねて」を上梓した。実際に寺へ足を運ぶなど2年以上かけて完成させ、今後の郷土史調査を担う人たちの役に立てば-と期待を寄せている。 今回調査した延命地蔵は、兵庫県養父市で幕府役人などが宿泊する本陣を営んでいた大橋家の大橋道智が作った。 寛文13年(1673)、道智が山道を歩いていると盗人に囲まれ、あわや命を落とすところを「延命地蔵、延命地蔵」と一心に念じると、盗賊たちは身を翻し去っていった。これに深く感謝した道智は6体の延命地蔵を作り、夜久野町直見の浄土真宗本願寺派・専福寺(杉本正信住職)をはじめ、京都府、兵庫県内の寺に安置したとされる。 瀬田さんが調査を始めたきっかけは、自身のもとに持ち込まれた一枚の古文書だった。 専福寺の境内にある堂には古くから延命地蔵が安置されていたが、「浄土真宗では地蔵をこのように祭ったりしない」と不思議に思っていた杉本住職。そばに保管されていた古文書「延命地蔵菩薩略縁起」を読めば謎が解けるのではと考え、周囲に相談すると、名前が挙がったのが過去にも郷土史の調査経験のある瀬田さんだった。 古文書を読む知識は無かった瀬田さんだったが、崩し字解読アプリも活用して読み解いた。地蔵の由来を知ることができて杉本住職は納得し、これで一件落着となるところだったが、今度は瀬田さんの探求心に火が付いた。ほかの地蔵をこの目で確認しようと調査に乗り出した。 京都市左京区の金戒光明寺、兵庫県朝来市の法樹寺などを巡り、行方不明のものもあったが、当時のまま残る地蔵、自然災害に巻き込まれ首だけになっても大切に保管されているものも確認。各市の図書館や教育委員会などにも問い合わせながら、一冊の本にまとめていった。 資料作成や文章校正時に知人たちの力も借りながら進め、調査開始から2年以上経った今年6月に完成した。本は福知山市立図書館中央館、同夜久野分館などで閲覧できる。 瀬田さんは「何もしなければ簡単に忘れ去られてしまう地方の歴史を書物として残せることがうれしい。たくさんの人に協力してもらってできた本なので、多くの人に手に取ってもらえれば」と話している。