「人間は完璧ではないことを心から理解できるようになりました」 中元日芽香が適応障害から学んだこと
心理カウンセラー・中元日芽香さん(元乃木坂46)によるカウンセリング・エッセイ『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』(文藝春秋)より、コラム「人間は完璧ではない― 私が経験した適応障害」を抜粋してご紹介します! 【画像】現在の中元日芽香さんの写真を見る(9枚)
「これくらいの不調はみんなあるよね」と軽く捉えていた
心理カウンセラーを目指したのは、過去に適応障害を経験したのがきっかけでした。診断されたのは2016年の秋頃だったかな。その時の話をしてみます。前作には書いていないことや、あれから時間が経った中で得た気づきなどを書きますね。 私が適応障害を患った原因は、分析したらいくつも思い当たりました。休むのが苦手で、疲れが溜まっていると自覚できなかったこと。仕事での評価=自分の人間的評価と思い込み、仕事で結果が出せていない自分を責めてしまったこと。ストレス過多の前兆として不眠や腹痛が頻発していたのを「これくらいの不調はみんなあるよね」と軽く捉えていたことなど。 適応障害と似た症状として、うつ病が挙げられます。適応障害は「ストレス因から距離を置くと速やかに症状が治まる」と言われています。この定義の通りなら、休業期間を経てまた元気に仕事ができそうですよね。 しかし私は、2カ月ほど休業してみたのですが、かえって悪化していくようでした。「私が休んでいる間も、みんなはライブをしているんだな。怠けているようで申し訳ない」「復帰しても、私のポジションにはすでに誰かがいて居場所がないだろう」「ファンの皆さんを待たせてしまっていて心苦しい」とか、考え始めるともう止められません。ストレス因から距離を置くって、物理的にはできても心理的には無理。うまく休めませんでした。
「自分自身に厳しすぎる」と気づけたのも回復につながった
2017年3月にアイドルとして復帰したのち、その年の11月に卒業しました。そして心理カウンセラーとして仕事を始めるまで約1年、完全に仕事から離れて休めた時間が心身の回復につながりました。休み始めた瞬間から右肩上がりに回復、なんて単純な話ではなく、体調が良い日も悪い日もありました。不安定な波と付き合いながら、気づいたら眠れるようになって、だんだんと元気になっていったかな。一応、心理カウンセラー養成講座を受講し始めたり、大学に入学してみたりはしましたが、先のことを考える余力なんてしばらく湧いてこなかったです。ぼーっとする時間が長かったですが、それで正解だったようです。 「自分自身に厳しすぎる」と気づけたのも回復につながったのではないかな。その反動で若干自分に甘々になってしまいましたけれどね……。でも、同時に他者にも優しくなれたからいいかな。 以前の私は自分にも他者にも厳しく、遅刻とか手抜きとか絶対許せない性格でした。適応障害と診断されてからは、朝、身体が起こせなくて現場に行けない自分が情けなくて、よく泣いていました。と同時に、今まで現場をいろんな理由で遅れてくるメンバーに対して、「心の中で遅刻を責めてしまってごめんなさい。きっと各々事情があったんだよね」と反省し、人間は完璧ではないことを心から理解できるようになりました。この気づきがないまま心理カウンセラーになっていたら、少し厳しいカウンセリングをする人になっていたかもしれませんね。