「裁判官任命は不可能」詭弁、弾劾審判すら妨害する韓国与党【社説】
与党「国民の力」が、空席となっている国会推薦の憲法裁判官3人の候補者の任命に反対している。内乱罪の被疑者となっている大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)の弾劾訴追に党の方針として反対したのに続き、憲法裁判所の弾劾審判すら妨害するというのだ。 国民の力のクォン・ソンドン院内代表は17日、「大統領権限代行は、大統領の『空位』の際には憲法裁判官を任命できるが、大統領の『職務停止』時には任命できないと考えるべきだ」とし、「弾劾案が憲法裁判所で認容されるまでは、(ハン・ドクス)権限代行による憲法裁判官の任命は不可能だ」と主張した。国民の力は、23~24日に行われる3人の憲法裁判官候補の人事聴聞会への不参加も決めた。無責任な詭弁(きべん)であり、妨害だ。 憲法裁の裁判官は定員が9人だが、国会推薦の3人が空席になっており、憲法裁は現在「6人体制」で運営されている。国民の力はチョ・ハンチャン弁護士を、共に民主党はソウル西部地方裁判所のチョン・ゲソン所長と同地裁のマ・ウンヒョク部長判事をそれぞれ推薦している。多くの法律専門家は「国会によって推薦された裁判官の任命は形式的な人事権の行使であるため、大統領権限代行が行使できる」と指摘する。国会(3人)や最高裁判所(3人)の推薦する裁判官の実質的な任命権は推薦機関にあるため、権限代行はそれを尊重しなければならないというわけだ。クォン院内代表も、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追委員長だった2017年2月に、憲法裁による決定の前であったにもかかわらず、「形式的な任命権」を強調しつつ、最高裁が実質的権限を持つイ・ジョンミ裁判官の後任の任命をファン・ギョアン大統領権限代行が行うべきだと主張している。 内乱の被疑者となっている尹大統領の弾劾審判の重大さと緊急性を考慮すれば、決定の正当性と安定性を保障するためにも、「9人体制」は必要不可欠だ。弾劾決定は6人以上の裁判官の賛成が必要だが、「6人体制」では1人反対するだけでも棄却される。6人体制では、弾劾の「審理」はできても「決定」まで下せるかは論議があるため、解消する必要がある。 国民の力の言いがかりは、強硬保守支持層をなだめつつ、民主党のイ・ジェミョン代表の公職選挙法裁判の二審、三審までできる限り時間を稼ぎたいという意図からのものだろう。これは尹大統領の早期罷免を望む多くの国民の意思に反するだけでなく、弾劾案の可決でかろうじて安定を模索している民生経済と外交安保の不確実性を高める行為だ。ただでさえ、尹大統領が法理争いを予告していることで人々の不安は完全には消えていない。国民の力は「内乱擁護政党」のレッテルでも足りず、尹大統領と手を組んで国を滅ぼすことを決意したのか。つまらない妨害・遅延戦術は直ちに捨て、憲法裁判官の任命手続きに協力すべきだ。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )