24時間診療見直しの波 スタートした「医師の働き方改革」 地域医療への影響は?
病院などで働く勤務医の時間外・休日労働に上限を設ける「医師の働き方改革」が4月1日に始まった。救急や外科を中心とした医療現場の過重労働の解消が叫ばれる中、地域医療にしわ寄せが出る懸念もある。九州では休日・夜間の診療態勢を見直した自治体や、地域医療機関への医師の派遣を一部中止した病院もある。これまでのように、いつでもスムーズに受診できるとは限らなくなってきた。 【地図】飯塚市立病院で小児科の休日・夜間診療を担う医師の派遣元 福岡県筑豊地域の飯塚市、嘉麻市、桂川町では1日から、飯塚市立病院が小児科の休日・夜間診療を開始した。主な対象は急な発熱や体調不良の子どもたち。これまで担ってきた医療機関2カ所のうち飯塚急患センターは休診し、飯塚病院救命救急センターは入院を必要とするような重症者の対応に特化する。 診療態勢変更の背景には医師の働き方改革がある。「これまでのような診療を維持することは難しくなる」。市によると3年前、飯塚病院から相談があった。医師の労働時間が制限されるため、休日・夜間診療に従来の人手を割けなくなったという。 市などは急患センターでの患者受け入れ拡大も検討したが、センターはビル内にあって手狭で、今後も内科診療は続けることから、小児患者を一手に引き受けるのは難しいと判断。市立病院で新たに引き受けることにした。
■広域から医師集め
態勢変更は受け入れ時間に影響した。これまで飯塚病院が昼夜を問わず対応してきたため地域の小児診療は24時間体制が維持されてきたが、4月からは重症を除いて午後10時までとなった。 市立病院での夜間診療を交代で担う予定なのは、これまでの飯塚病院、飯塚医師会、久留米大病院(福岡県久留米市)に加え、新たに地元の頴田病院と福岡大病院(福岡市)から派遣される医師たち。遠方からの移動時間などを考慮すると、深夜や未明の診療はできなくなった。飯塚市は休日・夜間の体調悪化には小児救急医療電話相談「#8000」の利用を呼びかけている。 一方、市立病院での診療時間は急患センターより長くなり、開業医らの負担が増えた。飯塚医師会に所属する小児科医は10人もいない。同会副専務理事を務めるひじい小児科クリニック(飯塚市)の肘井孝之院長(63)は「地域医療を守るため、開業医では若い方の私もできる限り協力する」。自院での毎日の診療と医師会活動に忙しいが、合間を縫って市立病院での夜間診療に出るつもりという。