「なんでギャルなの?」朝ドラ『おむすび』で“ギャル文化”がスベッたワケ いま「平成」リバイバルブームが起きているのに、なぜ?
しかし、ライフサイクルが多様化している現在では、その周期性がだいぶ崩れてしまっている。 ■Z世代にブームの「平成文化」はギャルじゃない? 現在の「平成ギャル文化」ブームはちょうど20年でリバイバルが起こってはいるが、これは、リアルでその時代を体験していない現在10代のZ世代の若者たちが新鮮なものとして受容していることが大きい。 さらに、若年層にとっては、平成文化を「過去の追体験」ではなく、新たなファッションとして取り入れており、必ずしも「平成のリバイバル」ということでもない。
「Y2Kファッション」と言われる、2000年代ファッションのリバイバルブームで、K-POPアイドルが当時の日本のファッションを取り入れたことに端を発する。それが日本に逆輸入され、東アジア圏で流行しているという実態がある。これは必ずしもギャル文化のみにとどまらず、より広い領域をカバーしている。 つまりY2Kファッションブームは、20年前の文化とはだいぶ様相の異なる、新しいものと言ってもいい。 ということは、Z世代に『おむすび』のギャル文化がドンピシャで刺さるかといえば、そうとは言えないのだ(そもそも朝ドラを見ている世代ではないかもしれないが……)。
一方、『おむすび』の主人公と同じく2004年にギャルだった世代は、現在30代後半くらいである。 ギャル世代の知人の何人かに聞いてみたのだが、「『おにぎり(発言ママ)』ですか? 見てないですねえ」とか、「私はギャル世代でしたが、ギャルじゃなかったんでよくわからないです」みたいな返事しかもらえず、参考になる意見は得られなかった。 ■“ギャル世代”は『おむすび』を見ていない しかし、改めて考えてみると、これこそが、『おむすび』で描かれているギャルが視聴者に受け入れられていない理由ではないかということに気付かされる。
要するに、 1. ギャル世代の多くはこのドラマを観ていない 2. ドラマを観ていたとしても描かれている世界に共感を抱かない ということだ。 そもそも、朝ドラのメインの視聴者は高齢者だ。少し古いが、2018年のNHKの調査で、年齢が上がるほど、視聴率も右肩上がりになっていくことが示されている。視聴者は、実に60歳以上が約5割を占めている。 筆者は50代前半だが、2000年前後のギャル文化は、自分より一回り下の世代の“異文化”、“異質の風俗”というイメージだった。現在、その時代のギャルを見せられても、「こういう子たちもいたな……」と思う程度で、「懐かしい」とは思わない。