「政治に関心持ってて偉いね」に違和感―井上咲楽が抱く“政治好き”タレントの葛藤と選挙の楽しみ方
“マイ選挙ノート”をつけて、選挙期間を楽しむ
――井上さんのようにもともと選挙に興味を持っている人はそれほど多くないと思いますが、そういう人が政治に興味を持つにはどうすればいいと思いますか。 井上咲楽: 選挙に興味を持つときの目線って、本当にどこでもいいと思ってます。例えば地元の候補者にどう興味持っていいかわからないというときには、その人が入っている議連のサイトを見てみようとか。ペット系の議連に入ってるのがわかったら、その人がペットについてどういう発言をしてるのかな、と見ていくだけでも親近感が湧いたり、感情移入できたりすると思うんです。 政策的なことがあまり身近なことじゃなくてなかなか興味を持ちづらいときは、候補者同士の構図を見てみたりする。そういうことでも興味を持つきっかけにはなるんじゃないかと思っています。私にとって選挙は、本当に「お祭り」なんです。 「前とは違う党から出馬している」ということに注目しても面白いですよね。今調べておくと、きっと何年経っても選挙が楽しいと思えるので、人生の楽しみの一つにもなるんじゃないかなと思います。 ――井上さんは選挙を取材しながら、“選挙ノート”を作っているんですよね。 井上咲楽: まさに今、衆院選ノートを作っています。47都道府県全部書き出して、選挙区別に候補者の名前や年齢、所属の党、経歴などをまとめているんです。 あとは、いつどこで駅頭活動をしていてどれくらい人が集まっていたとか、誰が応援に来ていたとかも記入していますね。同じ候補者でも、場所によって話していることも全然違うんです。「こっちでは高齢者向けの話をしたけど、こっちでは若い人の話をしているぞ」とか。パフォーマンスとしても見てて面白いです。それを見に行くために、選挙期間はどの選挙区に行くか、みっちりスケジュールを立てています。
「政治家も一人の人間」候補者に気軽に話しかけたりするのも全然アリ
――井上さんは「なぜ投票に行くの?」って聞かれたらどうしますか? 井上咲楽: 例えば、それまで会社員だった人が辞めて、背水の陣で朝から晩までずっとマイクを握って、声を枯らしながら頭をペコペコ下げて「一票お願いします」って演説をやられているのを見ると、「候補者も一人の人なんだなあ」と思うんです。それまで「国会議員」という特別な目で見ていた部分があったけど、自分たちと同じ人なんだなって思うと「投票しないのはあまりにも無責任なんじゃないか。投票しに行かなきゃいけない」という気持ちに変わりますね。 ――今回の衆院選、どういったことを意識して投票に行ってほしいと思いますか。 井上咲楽: 国民みんながそれぞれの立場があって、それぞれに困っていることがあると思うので、自分なりの視点を作って政策を見比べてみるといいんじゃないかと思います。 候補者が近所の駅に来たときにちらっと見てみるとか、思い切って候補者に話しかけてみるのも結構楽しいですよ。皆さん優しくしゃべってくれます。疑問をぶつけてみたらどう接してくれるのか、チェックしてみるのもアリだと思います。以前、ある候補者の方に話しかけたとき、有権者じゃないからと簡単にはぐらかされたことがありました。ただ、立ち去った後に私がタレントだと知り、戻って来られたんです。そういうふうに、接していると人柄もわかります(笑)。 あとは、地元の候補者の応援で有名人が来るときに、「ちょっと見に行ってみようかな」という感覚でもいいと思います。選挙期間中は、ぜひ演説を見に行ってほしいですね。 地元の候補者が「自分たちと同じ一人の国民なんだ」と思うところからスタートすると、一票の責任を感じることができるんじゃないかなと思っています。「この人が自分たちの代表として国会議員になって国会に行くんだな」と思うと実感が持てるはずです。 ――井上さんは、今回の衆院選で候補者にどんな質問をしたいですか? 井上咲楽: コロナ対策について「相手候補とは政策がどう違うんですか」と聞いてみたいですね。「コロナ禍での選挙戦、大変じゃないですか」って聞いたときに、真摯に答えてくれるのかも見てみたい。政策も大事ですけど、その候補者が人としてどういう人なのかを見るのも絶対大事だと思います。 ----- 井上咲楽 1999年栃木県生まれ。2015年、ホリプロタレントスカウトキャラバンで特別賞を受賞し、デビュー。バラエティー番組を中心に活躍する。2017~2019年『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」を務め、2020年からはレギュラーに。政治にも関心が高く、趣味の国会傍聴が講じてスポーツ報知で連載を持つほど。2021年9月にはファーストフォトブック『さよならMAYUGE』(幻冬舎)を発売。 文・ふくだりょうこ (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)