「親との関係を振り返ることは実は前向きなこと」父親の不在、毒親、AC…コロナ禍後の“家族の行方”を見つめる〈信田さよ子〉
カウンセラーの視点で現代人の心の問題を発信してきた信田さよ子さん。とくに母と娘、家族をテーマにした著書は多くの読者に支持されている。去年9月に刊行された『家族と厄災』も現代の家族がテーマ。タイトルにある「厄災」とは新型コロナウイルスのパンデミックのことであり、家族とコロナの関係をリアルタイムで考察した一冊だ。信田さんに話を聞いた。 【画像】1996年に刊行され、時代を変えた一冊『「アダルト・チルドレン」完全理解』とは?
コロナ禍はカウンセリングに何をもたらしたのか
「ウェブに連載したものをまとめたんですが、連載そのものがコロナの始まりからだったので、どこにも行けない、外にも出られない中で、私自身の身の回りのことを書くところから出発しました。というのも、カウンセリングという仕事自体を続けていけるかどうかも不安だったんです。原宿カウンセリングセンターを移転したのが2020年1月。引っ越してすぐにコロナの流行が始まったので、変化に対応するのに必死でした」 信田さん自身が置かれた環境も変化し、同時にカウンセリングも対面からオンラインへと移行した。 「私、仕事上では適応能力が高い人なんですよ。どんな環境でも困らない。人間関係でもね。そこは本当に私の唯一の誇れるところなんです(笑)。オンラインでカウンセリングを実施することにもすぐに慣れましたね。さきほどもオンラインで一件カウンセリングを実施したところです。いまも4種類のグループ・カウンセリングは全部オンラインで実施しています。」 カウンセリングを受ける側はオンラインで困ることはなかったのだろうか。 「2020年、グループ・カウンセリングをオンラインで始めたばかりの頃は、メンバーの女性たちは車の中から参加していました。多くの男性たちは妻が外部の自分の知らない人と関わるのをいやがって、家の中でやることを許さないからです。ひどい話なんですけどね。 また子どもに聞かせたくない、聞かれたくないという女性も多かったので、そのひとたちはカラオケボックスを使って参加しましたね。そういう妻の姿を見て夫がようやく『じゃあ、うちでやったら』と言うようになりました。別にそれをありがたがる必要はないですけど、彼女たちがオンラインをきっかけに、家庭の中に自分の時間と空間を持てるようになったという効果はありましたね。 それに何より遠方の人が参加できる。北海道から沖縄まで。ヨーロッパから参加した人もいましたね。私のACの本を読んでグループに参加したいって人の中には、ドイツとかフランスに住んでるひともいますから」