「恋焦がれて来た日本はこんなに落ちぶれてしまった」…経済が低迷する日本に「二重価格」は当たり前?
「経済大国だった’80年代、’90年代の考え方を、日本人はまだ切り替えられていない」
かつて、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だった。その日本に、にしゃんたさんが初めて訪れたのは高校生だった1987年。そして翌年、留学を機に日本での人生をスタートさせている。 「日本経済が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と称賛されていたバブル真っ只中の時に来日したんです。 スリランカにも日本の中古車が入り出した頃でした。象が道端を歩いている地元の景色が、日本から中古車が入ってきたことでガラッと変わった。スリランカにグローバリゼーションをもたらしたツールは、日本の中古車だと私は思っています。それで、海外に行くなら日本と決めて来たわけです。 今、つくづく経済は生き物だと感じています。日本の現状は、私が来日した絶頂期の時とは真逆です」 日本の去年1年間の名目国内総生産(GDP)は、ドル換算でドイツに抜かれて世界4位に後退した。1人当たりの名目GDPは、’22年に主要7ヵ国(G7)で最下位となっている。 「二重価格に関連して言うと、外国人留学生の授業料についても考えなければいけないと思うんですよ。私が教えている大学にも海外から留学生が来ていますが、日本を選んだ理由の一つに、授業料が安いことがあるかもしれません。 日本では、外国人留学生に対して政府や団体からいろんな奨学金が支給されますし、授業料を減免する大学に補助金が出ます。結果として、留学生は払う金額が安いんです。 私の教え子もそうですが、日本の学生の9割方は奨学金を借りて大学に来ています。留学生が余裕のある大学生活を送っている一方で、日本の学生はバイトに明け暮れている。留学生を優遇することよりも、日本政府にはまず、自国の学生への経済的支援制度を見直してほしいと思いますね」 日本はもはや、特別に豊かな国でも勢いのある国でもない。日本人は現実を認識する必要がある。にしゃんたさんは、そう苦言を呈す。 「今、二重価格についてなぜ議論が起きるのか。経済大国だった’80年代、’90年代の考え方を、日本人がまだ切り替えられていないからじゃないでしょうか。 現状からすると、置かれている立場は途上国とさほど変わらない。客観的に見て、二重価格はあって当然だと思います。設定が可能な分野から、早期に二重価格にするべきです」 にしゃんた 羽衣国際大学現代社会学部教授、経済学者、タレント。1969年、スリランカ生まれ。1987年にボーイスカウトの一員として17歳で初来日。翌年、留学のため再来日し、京都YMCA日本学校を経て立命館大学に入学。新聞奨学生をしながら文武両道の大学生生活を送り、1994年に同大経営学部を学部総代で卒業。龍谷大学大学院で経済学修士号と経済学(民際学)博士号を取得。’05年に日本国籍取得。山口県立大学の助教授などを経て’15年より現職。著書に『ちがうからたのしい・ちがうからできること』(「多様性」ってどんなこと?②岩崎書店)『ブッダと歩く神秘の国 スリランカ』(キノブックス)など。 取材・文:斉藤さゆり
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