火災保険の補償内容は「水災補償の有無」が重要! 見直しは2024年9月までに行おう
加入中の火災保険に水災補償が含まれているかを確認する方法
火災保険については、以前はどの損害保険会社も「住宅火災保険」や「住宅総合保険」という商品を同じ保険料率で販売していたのですが、1998年7月から2年間の経過措置を経て、2000年7月には各社個別の保険料率に完全移行しました(損保料率の自由化)(※3)。 ※3 参考:九條 守「保険業界戦後70年史」(2018年) 自由化のあとも、「住宅火災保険」と「住宅総合保険」の販売は続けられていました。原則、「住宅火災保険」には水災補償がなく、「住宅総合保険」では損害の額の70%(保険金額の70%)が保険金の上限となる点に注意が必要です。 また、この自由化以降に発売された火災保険を、この記事では「オールリスク型火災保険」と総称しますが、各保険会社により名称は異なり(例:個人用火災総合保険、家庭総合保険など)、さまざまな補償範囲のプランが選べるのが特徴です。 それらの中には補償内容を一つ一つ自由に選べる「自由設計型火災保険」もあり、これらの保険に既に加入している人は水災補償を含んでいるかどうか、保険証券などで確認する必要があります。
火災保険を見直すなら、2024年9月までに検討を
契約者が支払う保険料の基となる保険料率は、純保険料率と付加保険料率で構成されます。純保険料は事故発生時に保険会社が支払う保険金に充てられ、付加保険料は保険会社の保険事業に必要な経費などに充てられます。 損害保険料率算出機構が算出する火災保険の純保険料率を「参考純率」といい、保険会社は参考純率をそのまま使用する、あるいは修正して使用することもできます。 参考純率は保険会社にとって使用義務のない参考数値ですが、実際には保険会社の保険料率に大きな影響を与えています。 2023年6月に損害保険料率算出機構が変更の届け出を金融庁長官に行い、決定した火災保険の参考純率の主な改定内容は以下の通りです。 (1)平均で13.0%の引き上げ (2)水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化 (3)地域の単位:建物がある市区町村別 (4)区分数:保険料が最も安い「1等地」から最も高い「5等地」までの5区分 (5)料率の較差:保険料が最も高い地域と保険料が最も低い地域の較差は約1.2倍 この参考純率の改定に基づいた商品改定を、保険会社の多くは2024年10月に予定しています。 (1)については、そのまま実際の各社の保険料引き上げ率になるわけではなく、地域によってばらつきがありますが、大幅な保険料引き上げとなる地域も少なくなさそうです。 (2)に関しては、水災等地が4等地や5等地などの市区町村では、水災補償の保険料の上昇は避けられないでしょう。自分の住んでいる市区町村の水災等地は、「損害保険料率算出機構 水災等地検索」で確認できます。 今、水災補償を確保していないけれど必要だと判断している、あるいは水災補償に入っていることは確認できたけど、火災保険の満期があと1~2年後だという人は、10月の各社の改定前に火災保険の見直しを行い、最長の保険期間5年で契約することを検討するとよいでしょう。
まとめ
火災保険の補償内容は幅広いため、補償内容を覚えているのは大変ですが、まずは水災補償に注目すれば、かなり効果的な加入や見直しを行うことができます。 特に水災補償で大きな改定が控えている2024年10月になる前に、既に火災保険に加入している人は、保険証券で基本補償の範囲に水災が入っているか確認することをおすすめします。 また、この記事では火災保険のみを解説してきましたが、火災保険に付帯してしか加入できない地震保険への加入の判断も非常に重要なポイントです。
平野雅章