池上季実子、女優としての絶頂期に経験した大事故。馬車から空中に投げ出され…石畳に全身を強打「ずっと後遺症に苦しめられて」
――松田優作さんとはどのように? 「私の首がおかしくなって、首が動かない状態で現場に行っていたら、優作さんが『おはよう、季実子』って私の車のところに来てくれたのですが、優作さんは背が高いから顔が上になるじゃないですか。 でも、私は首が動かなくて顔を見上げられないから『どうしたんだ?』って心配してくださって。事故の後遺症で首が動かないことを話したら『作さん(深作欣二監督)に言って来てやろう』って、作さんを呼びに行ってくれたんですよ。 それで、作さんに『季実くん、どうした?何とか3カットだけ我慢してくれ』って言われたのですが、その3カットというのが、優作さんの運転するバイクに付けたサイドカーに私がゴーグルをして乗って、ガタガタの山道を走るシーンだったんです。 劇中では『キャー、キャー』って言って喜んでいるんですけど、実際にはもう地獄。ものすごく痛くて本当の悲鳴みたいな感じでした」 ――優作さんはとても優しかったそうですね。 「優しかったです。まだ私の首がおかしくなる前ですけど、私が優作さんに首を絞められて心中するシーンの撮影のときに、両手の4本の指で私の首の後ろをしっかりと支えて親指で首を締める動きをしてくれて。 通常は両手で首を力いっぱい握って上下左右に揺するから首に負担がかかってダメージがすごいんですよ。でも、優作さんのやり方だと、私の頭は大げさに揺れていても、がっちり指で支えてくれているからほとんど首に負担がかからないんです。気さくで優しくて本当にステキな方でした。 またぜひ共演させていただきたいと思っていたのですが、『華の乱』が公開された翌年に病気で亡くなられてしまいました」 ――事故の後遺症はどのような状態ですか? 「骨がうずくような痛みが出たり、むくみに悩まされたりしています。ひどいときは、午前中に着た衣装が午後になると入らないということもあるので、(専属の)スタイリストさんが、同じワンピースとかブーツをサイズ違いで用意してくださったりして助けていただいています」 さまざまな治療を受けながら第一線で活躍し続け、映画『極道の妻たち リベンジ』(関本郁夫監督)、『科捜研の女 第15シリーズ』(テレビ朝日系)、舞台『CHICACO 2024 Episode2』など多くの映画、ドラマ、舞台に出演。 次回は2022年に罹患して現在も後遺症を抱えている新型コロナ感染、公開中の映画『風の奏の君へ』の撮影エピソードなども紹介。(津島令子) メイク:大野志穂 スタイリスト:森本美砂子