フィリピン、アセアン地域で最も高い「法人税率」を引下げへ…期待される経済効果は?
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今回は、海外からの直接投資を加速させ、経済活性化に寄与することが期待される新たな法律の制定の話題を中心にみていきます。 【動画】日本のシン富裕層✖︎永住権・移住
比・法人税率20%に引下げ…期待される効果は?
フィリピンの上院は、経済回復を促進することを目的とした「CREATE MORE」法案を可決しました。この法案の主な内容は、国内外の企業に対する法人税率(CIT)を25%から20%に引き下げることで、企業活動を活性化させるというものです。さらに、重要なサービスに対する付加価値税(VAT)の撤廃を図り、大規模な国内企業に対してはVATのゼロ評価、免除、関税の免除も適用されることになります。この法案は現在、大統領の署名を待っており、署名後に正式に法律として施行される予定です。 法人税率が20%に引き下げられることで、フィリピンの税率はASEAN諸国の平均税率である23%を下回ることになり、これまで最も高い法人税率を持っていた状況からの改善が図られます。この税率の引き下げは2020年7月に遡って適用されるため、CREATE MORE法案は外国直接投資(FDI)を呼び込み、国内産業の成長を促進する重要な要因となると期待されています。 特に恩恵を受けるのは、消費者向け企業や通信業界です。これらの業界は現在、ほぼ法定税率の25%に近い税負担を抱えていますが、法人税率の引き下げにより、利益の増加が期待されます。 また、資本設備や原材料の輸入に対する税金の免除が、コストの削減や利益率の向上につながるため、不動産ディベロッパーも恩恵を受ける見込みです。一方で、銀行業界や電力業界に対する影響は限定的と考えられます。これらの業界はすでに優遇税率や低い税率の恩恵を受けているためです。 ABキャピタル証券の調査によると、法人税率が220%に引き下げられることで、企業の1株当たり利益(EPS)の予測が約3%上昇すると予想。特に、消費者向け企業や通信業界、不動産ディベロッパーには大きなプラスの影響が見込まれています。結果として、これらの要因が市場全体に対してポジティブな影響を与え、フィリピン株価指数(PSEi)の7,500ポイントに向けた推進力となると見られています。