プログラミング世界大会(11月24日)
最近、人工知能(AI)の話が報道されない日がないほど、さまざまな分野でAIが幅広く活用されている。また、ロボット開発技術の半分以上はソフトウェア開発と言われる。 このような、大切な技術分野の基盤がプログラミングだ。会津大学上級准教授の渡部有隆先生は、AI、ソフトウェア工学、ロボット技術と幅広く研究を進めているので、その基盤となるプログラミングについて話をお聞きした。 先生は、プログラミングの研究、教育に大変熱心で、2004年からプログラミングのオリンピックと呼ばれる国際大学対抗コンテスト(ICPC)に向けて、コーチとして学生を指導し、学生を送り出している。 世界大会に出場するには、厳しい国内予選、アジア地区予選を勝ち抜かないといけない。初めは、外部の機関が発行した過去問を使った演習や解説が中心だった。大会が近づくと、週5時間のチーム練習を毎週行った。今から考えるとかなり厳しい指導だった。その努力が実り、2009年には、世界大会にチームを送り出すことができた。
2009年、ICPCはスウェーデン、ストックホルムで開催され、会津大学は世界49位、優勝校はサンクトペテルブルク国立情報技術・機械・光学大学だった。当時、私は学長だったので、その成果を評価し大学として表彰した。 渡部先生は、その時の大会の印象を次のように述べている。 ICPCは、まさにプログラミングの「ワールドカップ」、あるいは「オリンピック」と称されるべき大会だ。その規模と質に圧倒される。また、開催地での観光やおもてなしも一流であり、大会全体に特別な雰囲気が漂っている。ストックホルム市庁舎での開会式が特に印象的だった。ここはノーベル賞の晩さん会が行われる場所として知られ、歴史的かつ象徴的な場所での開催が大会の格式をさらに引き上げていた。 世界大会出場を契機に、渡部先生は、過去問と採点機能をオンラインで誰でも使えるAizu On―Line Judge(AOJ)を作成して公開した。学生は、自分たちで問題の作成を行い、自分たちで自主的にプログラミングコンテストや合宿を行うようになった。
また、先生の部には毎年50名以上が入部し、演習室が満員の状態であった。 会津大学は、さらに3回世界大会に行った。2016年はタイのプーケット、2017年は米国のラピッドシティ、2020年はロシアのモスクワだ。国内の世界大会経験校は10校で、そのうち4回以上を達成したのは東大、京大、東工大、筑波、会津の5校だ。 AOJによる教育の功績が認められて、2022年、渡部先生は情報処理学会優秀教育賞を受賞した。 先生は浜通り出身なので、福島の高校生が、世界トップレベルの大会に、今後も挑戦してくれることを期待している。 (会津大学元学長 角山茂章)