<通常国会>150日間の論戦はどうだったのか? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
通常国会が2014年6月22日に閉幕しました。与党の自民・公明が12年衆議院総選挙で圧勝して過半数を大きく超え、13年参議院選挙でも勝って与党だけで過半数を確保し主に参議院が野党(首相の味方以外)多数となる「ねじれ」を克服したためか、内閣(トップは首相)が両院に提出した法案の成立率は97.5%と高い水準を獲得しました。 【図解】法律ってどうやって作られるの?
●予算審議
前半の予算案も戦後3番目の速さで成立。かつて「ムダの象徴」とみなされた時期もあった公共事業費を前年度比で10%以上増やすなど突っ込みどころはあったのに野党の追及は弱かった。前年より若干改善したとはいえ歳入(国の収入)の4割以上を国債(国の借金)で埋めている点にも大して問題視しませんでした。 原則をいえば赤字国債は財政法という法律で禁じられていて1年限りの特例法(公債特例法)で国民の厳しい指摘を受けて許してもらうという姿だから同法の成立を巡って野党の存在感を示せばいい……と思っていたら2012年の野田佳彦内閣で成立した特例法に「2015年までは予算が成立すれば自動的に赤字国債を発行できる」との規定を盛り込んでいたのです。いったい野田内閣は誰のために政治を行っていたのでしょう。
●集団的自衛権の「行使容認」
後半国会は安倍晋三首相が執心する集団的自衛権の行使容認論議一色になりました。しかしこれは国会での論戦にほとんどなっていません。首相が目指すのは閣議決定(内閣の決定)で与党での合意ができれば、いやできなくても首相が本気ならばやれます。首相以外のすべての国務大臣が反対しても全員をクビにして全職兼務となって決定すればいいのですから。ここで憲法改正に匹敵する決定を1内閣の決定でしてもいいかという反発はありました。 でもそれを広範な議論として首相を追いつめるに至った野党は皆無。それどころか行使容認の野党が賛成と言い出し、野党第一党の民主党は党内に賛否両論を抱えて身動きが取れないありさまでした。与野党の議席が伯仲していれば野党の是々非々路線も一定の意味があるでしょうが、現在の「安倍1強」で首相の意見に賛同し「責任野党」とおだてられていては野党の存在感ゼロです。 後半国会も与野党論議が低調なまま、それでもかなりの重要法案が可決成立しています。