習近平は焦っている…ついにヨーロッパにも「見放された」中国が、首脳会談でプーチンと蜜月を交わした「本当の狙い」
“政治とカネ”の裏で成立した「2つの重要法案」
政治資金規正法の改正案の成否が注目を集める終盤国会。その国会で、5月10日、対中国を想定した2つの重要な法律が成立したことは、残念ながらあまり大きな話題にならなかった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション その1つが、陸海空の各自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を常設することを盛り込んだ改正自衛隊法。そしてもう一つが、「ポスト岸田」を目指す高市早苗経済安保相が、「故・安倍晋三元首相からの宿題」と位置づけてきた重要経済安保情報保護・活用法である。 これらのうち、改正自衛隊法は、サイバーや電磁波など各自衛隊にまたがる分野の作戦指揮を、新設する「統合作戦司令官」が担うというもので、たとえば台湾有事に至った場合、これから本格化するアメリカ軍との連携強化も加え、これまでにない迅速な対応を可能にするものだ。 また、重要経済安保情報保護・活用法も、その名のとおり、経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る制度を設けるというもので、主導した高市氏が、去年秋のテレビ番組で、「まずは、この法案が成立したら、また(総裁選を)戦わせていただく」と語っていたほど重視してきた法律である。 保守系議員たちによる今後の「政局」をにらんだ動きと言えなくもないが、沖縄・先島諸島の住民と観光客約12万人を九州など島外に避難させる動きやシェルター建設に向けた動きと合わせ、中国による台湾侵攻、もっと言えば、それによって沖縄県などが巻き込まれるリスクに備えた動きが、遅まきながら目に見える形で動き出したと言っていい。
習近平とプーチン、それぞれの思惑
こうした中、中国も着々と布石を打っている。1つは、5月5日から習近平総書記がフランス、セルビア、ハンガリーを歴訪したことだ。 しかし、この欧州歴訪は必ずしも成功したとは言えない。習氏からすれば、歴訪によって経済関係を強化し、アメリカ主導の対中包囲網を切り崩したい狙いがあったはずだ。 ところが実際は、訪問先が、比較的、習氏と近い国々に限定され、イギリスやドイツ、それにG7サミットの議長国、イタリアを組み込むことができなかった。 欧州諸国では、安価な中国製品が大量に流入していることへの懸念が強く、もともと習氏に好印象を持っていないEUのフォンデアライエン委員長などは、フランスのマクロン大統領とともに臨んだ3者会談で、「世界は中国の過剰に生産された製品を吸収することはできない」と、習氏に痛烈な言葉を浴びせたほどだ。 つまり、習氏は、約5年ぶりとなった欧州歴訪で、何一つ手土産を得ることなく帰国したことになる。そこに都合よく北京詣でに来てくれたのが、ロシアのプーチン大統領とその御一行様たちだったのである。 大統領として5選を果たしたばかりのプーチン氏には、ラブロフ外相や新任のアンドレイ・ベロウソフ国防相、前国防相のセルゲイ・ショイグ安全保障会議書記、それに国営企業幹部などが随行した。 ウクライナ侵攻以降、国際社会で孤立するロシアからすれば、頼みの綱は中国だ。アメリカ議会でウクライナ支援予算案が可決される中、ロシアとしては、今後、ウクライナへの武器供与が再開される前に戦況を有利に運ぶ必要にも迫られている。 一方、中国は、このところ経済成長が鈍化し、若者の就職難や不動産価格の暴落が影を落としているとはいえ、世界第2位の経済大国であり軍事力も強大だ。 加えて、サイバーや宇宙領域での技術力が高く、ロシアが喉から手が出るほど欲しがっている物質、弾薬の材料として転用できる「ニトロセルロース」の生産国でもある。 プーチン氏としては、もはや中国に擦り寄るしかなく、習氏もその足元を見透かすように、欧州歴訪の汚名をそそぐ機会として利用したのである。 振り返れば、2012年11月、習氏が総書記に就任し、その翌年の2013年3月、国家主席の座に就いた際、初の外遊先にロシアを選んだ。 これは、「尊敬するプーチン氏に学びたい」「強大なロシアのトップと会うことで自身の権威を高めたい」との思いがあったからにほかならない。それから10年余り。独裁者2人の立場は完全に逆転したことになる。