【独自】イニエスタ引退試合の主催会社が資金繰りに奔走する裏事情
SPORTS&LIFE社の2024年6月期の決算書によれば、売上高は12億円余りで、営業利益は約6000万円も出している。税引き後の純利益は約3000万円。ただし、バランスシートを見ると、純資産は1900万円しかない。前の期まで債務超過だったのをようやく解消したところで、自己資本比率は6%と財務体質は軟弱だ。しかも資産計上されている「短期貸付金」1億8900万円と「長期貸付金」4700万円の合計2億3600万円について、資産性が気になるところ。銀行がおいそれと貸せる決算内容ではなさそうだ。 6月末時点で借入金は短期のみで2億円計上されており、一方の現預金は5600万円と平均月商の半分程度だから、利益は出ていても資金繰りは楽ではないだろう。特に大きなプロジェクトに関わると先行する支出も大きくなる。 SPORTS&LIFE社の関係者は今回、ローソンエンタテインメントに請求書を発行した直後にファクタリングを申し込んでおり、その際、資金使途について「選手たちの航空チケット代やホテル代などですぐにでも3億円は必要」と話していたという。 ● 銀行の審査部門界隈は 「イニエスタ関連銘柄」を警戒 実は、SPORTS&LIFE社が銀行から借りにくい理由はもうひとつある。昨年粉飾決算で倒産した会社と浅からぬ関係にあるのだ。 その会社とは物流ソリューションなどを手掛けていた(株)ビーリンク(神戸市中央区)。2023年2月3日に神戸地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債は約50億円)。 ビーリンクは2019年に副業としてイニエスタ氏がプロデュースするスニーカーブランド「MIKAKUS」の取り扱いを開始し、「旧本店ビル」(2022年8月まで本店を置いていた)の1階に日本初出店となる店舗を開設していた。代表のH氏はSPORTS&LIFE社の設立時の代表で、ビーリンクの旧本店ビルの所在地とはSPORTS&LIFE社が東京に移転するまで本店を置いていた住所と同じである。 H氏はビーリンクについて多額の簿外債務があり、長年決算を粉飾していたと銀行団に打ち明けた後、SPORTS&LIFE社の代表は辞任した。その後、ビーリンクは中小企業活性化協議会の支援を受けてスニーカー事業から撤退するなど、私的整理による事業再生を目指したものの、金融機関の協力が得られず、破産手続きとなった経緯がある。 これ以降、ビーリンクやイニエスタ氏の関連銘柄は銀行の審査部門界隈では要警戒という認識がされている。SPORTS&LIFE社は日曜に迫った「EL CLASICO in TOKYO」をつつがなく開催できるだろうか。 ダイヤモンド・オンラインではSPORTS&LIFE社に資金繰りの状況などについて質問したが、期日までに回答はなかった。
井出豪彦