“SE経験者”採用したのに全然仕事ができない…“試用期間満了”と同時の「解雇」 裁判所は認める?
無断欠勤
25日は金曜日だったため、Xさんは週が明けた6月28日に職場へ行ったが、業務を行うことなく、私物を持って退社しようとした。上司は「このまま帰ってしまうと無断欠勤になります」旨伝えたが、Xさんは構わず退社(そのまま7月17日まで、少なくとも15日間の無断欠勤を続けた)。
上司がプッシュメール
その2日後、上司がXさんにメール。「7月31日までは就労の義務があり、現在無断欠勤している状況となっています。欠勤なので、もちろんその分の給与は発生しません。出勤し辛い気持ちは理解できますが、ご自身のスキルアップのためにも残りの期間出勤することをお勧めしますがいかがでしょうか」という内容を送った。 これに対して、Xさんは「7月のシフトに関して文書での通知もないまま無断欠勤であると主張されることは承服いたしかねます」と返信した。
出勤停止処分
7月21日 会社はXさんを【7日間の出勤停止の懲戒処分】とした。
解雇
7月31日 会社は、試用期間が満了したと同時にXさんを解雇した。 その後、Xさんが提訴。「解雇は無効」「7日間の出勤停止処分も無効。賃金を支払うべき」と主張した。
裁判所の判断
結果は、Xさんの敗訴となった。裁判所は「解雇も出勤停止処分もOK」と判断。以下、順番に解説する。
解雇OK
裁判所は2つの理由をあげて解雇OKと判断した。 ■ 解雇理由1(能力不足) SEとして2年程度の経験に応じた職務能力を有していることを前提に採用されたにもかかわらず、その能力がなかった。 Xさんは、職務経歴書に「平成30年4月から令和3年3月まで社内SEとして勤務し、平成30年6月から開発経験がある」と記載し、面接時にもその旨説明していた。 どっこい、フタを開けてみると、数年のSE経験があれば難しくないはずの電卓アプリの作成ができず(入社後のある一定期間)、作成途中の基本的な英単語の誤りが多く、英語の「2」や簡単な英単語をインターネットで検索し、一定の経験があれば時間をかけずに作成できるお問い合わせアプリを作るのに「5日かかります」旨述べた。 ■ 解雇理由2(事実に反する説明) 会社はXさんが現にSEとして稼働していたことを重視していた。しかし、Xさんは自己の経歴について故意に事実に反する説明をした。 Xさんは、令和2年12月4日から翌年3月まで精神疾患により休職していた。それにもかかわらず、職務経歴書にはその期間中も業務を担当していた旨記載されていた。 裁判所は上記2つの事実を認定し、「これらの解雇理由は、会社がXさんを採用した時に認識していたXさんの資質・能力などが適格性を有しなかったことを内容とするものであるから、本件解雇には、客観的に合理的な理由が存し、本件解雇は社会通念上相当である」と判断した。 これは、労働契約法16条に沿っている。解雇がOKとなるには非常にハードルが高いが、今回のように明らかに能力不足である場合には認められることがあるのだ。